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2009年4月22日 (水)

7)、アイセル湖大堤防(ダイク)、元気の良いお姉さん

インド人の館を出た後、まっすぐアイセル湖に向かった。少しずつ、少しずつではあるが、辺りの風景は荒涼さを増してくる。それでも人情は変わらない。ただ、いよいよ出会う人が少なくなってくる。

アイセル湖の大堤防南端に着いたのは夕方5時ごろであった。そこに小さな売店があった。「こんにちは」 「いらっしゃい!何にいたしましょう。」 高いカウンターの向こう側から元気の良いお姉さんがにっこりと笑っている。義理の姉妹が日本に遊学しているとのことで、このお姉さんは英語が堪能だ。

「なにがおいしい?」 「なんでもよ。こっちのソーセージのフライもいいし、あっちのフライドポテトも最高よ。すぐに揚げてあげるわ」 「それじゃあ、これとあれと。それからポテトサラダなんかある?」 「あるわよ。こっちにあるけど、どれにする?」 「そのハムのはいったやつ!」 「どのくらいほしい?」 「小さいパック分入れてくれる?」 「わかったわ。ちょっと待っててね。」 他には誰もいない。「ここで弁当の残りを食べてもいいかな?」 「ええ、いいわよ」

コロッケやソーセージを食べながら、その気の良いお姉さんのいる売店で小一時間ほど雨宿りした。その間にも高齢の御夫婦が雨宿りに入って来てフライを食べ、また出て行った。 「そろそろ出かけないと日が暮れてしまう。じゃあまたね。」 「ありがとう。」 「そうそう、堤防に向うにはどっちにすすめばいいの?」  姉さんが外に出てきて手を高く挙げ、正面の道の方向に向かって振り下ろしながら、「ゴー、ストレイト(真っ直ぐ進め)」と、号令をかけてくれた。

まだ雨は降ったり止んだりしていた。今日中に30キロを渡り切る必要に迫られていた。 幸いにも強い追い風だ。このオランダの海岸は偏西風の関係であろう、多くの場合「西風」が吹いている。その日は特に風が強かった。自転車のスピードと風の速度が同じくらいであり、辺りを飛んでいる鳥がまるで空中に止まっているように見える。

鶴の一種であろう、太い首筋がU字型に曲がった、ぼってりした格好の鳥も3,4羽見かけた。その特徴ある格好から童話の世界で赤ちゃんを運んでくるという例の”コウノトリ”であろうと宏は思った。日本では見かけない。その写真を撮ろうとしたが、割合に臆病で、数十メートル手前で飛び立ってしまい近づくことが出来ない。

宏は左手にカメラを持ち右手でハンドルを握って、走りながら撮ろうと考えた。数枚のシャッターチャンスはおとずれた。うまく撮れたようであり、うまくいかなかったようにも思える。日本に帰ってからのお楽しみだ。

堤防の中間地点は少し広くなっており、自動車道路の向こう側に休憩所がある。そのあたりで急に雨足がひどくなってきた。前方にバス停が見え、急いで避難する。 厳しい横殴りの雨だ。10m先も見えない程で、少し心細い。

20分も雨宿りしたであろうか、少し小降りになったところでまた走り始めた。 南端を出発してから1時間半後、堤防の北の端が薄靄の中ぼんやりと見えて来た。時計は8時を指している。

さあ、どうしようか?』と、宏はペダルを踏みつつ思案を始める。『この雨の中で濡れながらの野宿は無理。・・、泊めてくれそうな町までは10キロ、いや、20キロ・・、何処かにバス停でもあればいいのだが・・、いやいや、いい歳をして日本人の恥さらし。』と、学生時代の野宿の事を懐かしく思い出しつつも、自転車を進めていく。

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