« 第20話”光源の見かけの面積と指向特性の関係” "the relationship between the apparent light area and directional characteristics". | トップページ | 32)、広島の田舎から羽田へ 今度は娘がスペイン一人旅 »

2009年5月29日 (金)

29)、ナポリ、卵城、サンタルチア港

宏の両親は十数年前にヨーロッパ旅行ツアーを楽しんで来ている。その母が久々に田舎に帰って来た宏に話しかける「宏ちゃんが送ってくれた日記は面白くて、3回も読み返したよ。最初はざっと、その次はじっくりと読んでみた。3回目はお父さんが地図を出して来てくれたので、二人で地名を探しながら、ここかな?あっちかな?と、確かめながら読んだわよ。」

「3回も読み返してくれたの?そりゃあどうも有難う。疲れたでしょう」 「下手な小説よりもはるかに面白かったわよ。自分の息子が行って来たということもあるし、私らもヨーロッパ旅行をして来ているでしょ。特にスイスの山越えをしていく辺りの情景は良く分かる。私らは登山電車だったけど、本当に山肌にへばり付くようにして登って行くんだよね。もし元気だったら、もう一度、行ってみたいけど、もう駄目だよね」

「そんなことないよ。電動の車椅子でも買って、遊び回ればいいじゃないの」「・・、ところでローマやナポリにもいったんでしょう、私らもいったけど」「うん、行ったよ」「旅日記では省略してあったけど、その時の話をしなさいよ。ピサ駅前から夜行列車に乗ったんでしょ。あれからどうなったの?」

「あれから夜行列車に乗り込んだんだけど、特急寝台列車なので、自転車を置く場所がないんだ。切符を買う時に自転車を持ち上げて「これを持ち込むよ」と言ったんだけど、駅員がひどく怒った顔をして、何やら喋ったんだ。・・、」

何となく駅員が、「それをおれたちに運んでくれというのか。自分で運べ!」と言ったように思った。切符はくれたし、別料金の請求もされなかったので、それ以上にこだわるのは止めた。

その寝台列車は、ひとつのボックスに3人並んで眠れるようになっていた。他の二人が気軽に許してくれたので、自分の足元に自転車を置いて眠ったが、ちょっと窮屈ではあった。 4時間ぐらいは寝たのだろうか、明るくなって目が覚めた。

特急列車は停まる駅も少なく、猛烈な勢いで朝もやの中を飛ばしている。通路に自転車を出してタバコをふかしていると、たまに人が通る。その度に自転車を片寄せながら、申し訳なさそうな顔をふるまっておいた。

朝の6時過ぎにその列車はナポリ駅に到着した。天気の良い日であった。自転車をバックから取り出して組み立ててはみたものの、「さて、これからどうしたものか」と思案顔。予定がないのであった。 ナポリ中央駅前は非常に長く広がっており、まだ、眠りの中にあった。『とりあえず朝食だ。それから海岸に出てのんびりしよう。』 ゆっくりと動き出した。

カプアナ門(中村慶一郎さんが日本テレビ(4チャンネル)で、ナポリサミット報道で背にしていた建物)の近くで、コーヒーとパンを腹に収めた。 段々と人や車の往来が激しくなってくる。そのデコボコした石畳の道を、南西へと進む。

ニコラアモーレ広場、ボヴィオ広場を経由し、ヌォーヴォ城、サンカルロ歌劇場前を通って、王宮前に達した。王宮前広場付近は大改修工事の最中で、動くこともままならない様子だった。

「ナポリの交通渋滞は半端じゃない」と聞いてはいたが、東京の比ではない。(後で宏は、2週間後にナポリサミットが開催されることを知ったのだが)、その追い込み工事が交通渋滞を想像を絶するものにしていたようだった。

小高い丘の上にあるサンエルモ城 は、王宮前広場からもよく見える。海岸に出た。歌で有名な、サンタルチア港である。その小さな港の向こうに卵城(Castel dell’Ovo)が、朝日をいっぱいに浴びながら、どっしりと構えている。海に突き出た城であり、懐かしいサンタルチア港を懐に抱え込んでいた。

城の門は衛兵で固められていた。 穏やかな朝だった。卵城に渡る橋の近くで、父と子が素潜りで貝を取っていた。宏はしばらくの間、その風景をただボーっと眺めていた。 地元の老人が、「その貝を売ってくれ。いくらだ?」と交渉しており、見ていて面白い。

その老人が宏を手招きする。ついて行くことにした。卵城には入らず、その横にある路地裏に、どんどん導かれて行く。夕方には賑わうであろうその路地裏も、今は朝の準備中で、自転車を押す東洋人の男(宏)と、地元の御老人との散歩は人目に付いた。(奇異な目で見られて少し恥ずかしかった)。

そんなことにはお構いなしで、老人は手招きを繰り返したり腕を引っ張ったりしながら、宏を連れ歩く。レストランの中庭や堤防伝いにも歩かされた。イタリア語なのでよくは分からないのだが、何となく、「ここで自分の息子が働いている」だとか、「娘が勤めている店」だと喋っているのように思えて、適当に相槌(あいづち)を打ちながら付いて歩く。

ヨットがたくさん停泊するサンタルチアは、小さな港ではあったが、歌にあるそのもので、明るく眩しかった。

| |

« 第20話”光源の見かけの面積と指向特性の関係” "the relationship between the apparent light area and directional characteristics". | トップページ | 32)、広島の田舎から羽田へ 今度は娘がスペイン一人旅 »

W ヨーロッパ縦断の旅(後編)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 29)、ナポリ、卵城、サンタルチア港:

« 第20話”光源の見かけの面積と指向特性の関係” "the relationship between the apparent light area and directional characteristics". | トップページ | 32)、広島の田舎から羽田へ 今度は娘がスペイン一人旅 »