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2009年6月 2日 (火)

33)、スペイン(バルセロナ)からの便り

便りがないのは元気な証拠だ。ハガキは1週間はかかる。そろそろ来るんじゃあないか」と言ってた宏も、いささか心配になってきた。
「あれだから、電話をかけるだの、ハガキをすぐ送るだの言わなければいいのに。・・」
ひょっとして何かあったんだろうか?
 帰国する頃になっても連絡が入らなければ、探しに出かけることになるかもしれない。

 出発から10日後になって初めて電話がかかってきた。
妻が嬉しそうな声でしゃべりだすと同時に、小言も言っている。
「何をしてたの。こっちは心配してるんだから。」
「・・・」
「それでどうしたの」
「・・・」
「そう」
「・・・」
「ふーん」
「・・・」
「それで?」・・・と、何を話しているのか皆目見当が付かないが、安心した。
後で、『 電話の掛け方が分からなかった 』らしいと聞いて、納得できた。
東京のように電話ボックスの多い都市は、ヨーロッパでは稀。
唯一イタリアの観光の島カプリでだけ新品の電話ボックスが目に付いた。(携帯電話が発達した現在では、それもどうなっていることやら?)
 数日後に、マドリッド消印の絵ハガキが届いた。

『(-7.9.94消印) お父さん、お母さん、由美ちゃん(次女)へ 電話しなくてごめんなさい。(これが着くころにはまだ電話してないかな)。初日から、いきなり回りまくってしまった。といっても、空港で知り合いになった Hong Kong(ホンコン)の男の子二人と、とても馬があって、一緒に回ったんだ。彼ら、仲々行動力があって、面白い。
『もちろん会話は英語です。彼らについて行ったお陰で 9/3 は宿がYouth!(ユースホステル) 650円で朝ご飯まで付いてきた。そして、9/4 は Toledo(トレド)という小さな町に来て、4000円のホテルにいます。今日も色んな所に行ったんだけど、ちょうど道を聞いた(私がよ)女の子と、英語+スペイン語混じりの会話で、一緒にごはんを食べたりと、仲々Good!
『だって彼女は Barcelona(バルセロナ)出身で、おいしくて安い食べ方を知ってるんだもん。明日も一緒に行こう!と、2人で言ってます。なんか、一人で旅行しているという感じではないです。では、ⅰAdios ! (アディオス:さようなら)』
 
( 父親ゆずりの汚い字だ。)
 その一枚のハガキを、宏も妻も、何度も何度も(穴が開くほど)読み返した( 親というものはそんなものだ )。
 電話で妻が叱ったのが利けたのか、ハガキはそれから3通届き、電話も数回かかってきた。宏と較べ、はるかに"こまめ"である。後で聞くと、田舎にも親戚にも絵ハガキを出したそうだ。

『(12,9,94 消印) 元気ですか?私はとても元気です。でも、Maria(マリア)と一緒にいた時が Peak (最高)に面白過ぎたので、なんだか一人でさびしいって感じ。でも旅行者の人や、Bar (バー:安い食べ物屋)で、ちょっとした会話は出来るようになった。
 昨日は Segovia (セゴヴィア)という所にいて、今日は Cordoba(コルドバ)にいます。Segovia では昔の水道橋が見れてよかった。本当にこれはスゴーイ!! Cordoba にはスペイン風新幹線で(しかし、とても遅い)今日来たばかりで、明日もここに居るつもりです。今は外の食べ物屋で一杯やっている所なのさ!!ではまた。ⅰHadios ! 』

 電話が入り、絵ハガキが届けば一応は安心するものの、待つ身にはつらいものがある。宏はついこの間まで待たせていた立場であって、事情も手に取るように分かるのだが、帰って来る娘の顔を見るまでは、落ち着かない毎日だった。
宏でさえもそうなのだから、妻や田舎の祖父母の心配は察しが付くというもの。
『 あのような冒険は、あれが最後かな?』
 娘の身の安全を心配しつつも、時にこっそりと、ニヤ付いていた。
1_5
2_4
 出発から3週間と2日後、
無事、娘が帰って来た。
その夜宏は、遅くまで娘の話に付き合っていた。色んな方にお世話になったようである。
目的が宏のものとは当然違うし、女性と男性の差もある。
娘の経験してきたものの多くは、宏のものとは大きく異なっていた。
 またどこかに冒険旅行をしたくなる気持ちを抑えるのに、心の奥で苦労していた。

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