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2009年6月

2009年6月16日 (火)

第40話、”光の質?”(演色性)"Quality of light" (CRI:"color rendering index, Ra")

 昔は、灯油を使ったカンデラを車の前にぶら下げて、走っていました。エジソン電球になって明るくはなって来ましたが、光の色合いは、”黄”であり、演色性が良いとは、とても言えませんでした。 ハロゲン電球が開発され、これが、”黄白色”になり、『 随分と白くなったものだな~』と思っていたのです。そこに、メタルハライド放電灯(HID:High Intensity Discharged )が現れ、ヘッドランプ業界でも"光の質"を問われるようになりました。
Candela long ago used kerosene hanging on the front of the car and ran. Has been become the Edison light bulb, light, light shades are "yellow" is a good colour rendition and wasn't very. Halogen light bulb was developed, it becomes the "yellowish", "that's long and white-" and I was. There appear, metal-halide discharge lamps (HID: High Intensity Discharged), questioned the "quality of light" in the headlamp industry. 
 ヘッドランプの法規上は、赤はNGです(テールランプと間違えるので)。が、紫はどうか、青はどうか、「気持ちが悪くなる色だ。白が良い。」「黄色が良い」と、盛んに議論された末、現在のような状態に落ち着いて来たようです。
 光の質は専門的には、色度座標で扱われるのですが、難しいのでパスすることにして、今議論したい”演色性指標、Ra”に関して簡単にお話しましょう。この数値は100に近いほど、”昼間の色の見え方に近い(白色に近い)”という数値です。
Headlamp regulations on red NG is so (tail lights and mistakes). There are purple, blue, whether "sick colors. White is good.  "Actively discussed "yellow "and the end of the current state seems to come calm. Briefly talk about is the quality of the light is professionally treated by chromaticity coordinates, and difficult to pass, now want to discuss "color rendering index, Ra" Let's. This number is closer to 100 is "color of daylight closer (closer to white)" that is a number.

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第39話、ハロゲン H・I・D L・E・D のコスト比較

 現状レベルは、1:3:30 位らしいです。( 但し、3000Lmをハロゲンにも求めた場合であり、ハロゲン電球は 3本使いとしています。ハロゲンは暗くて良い(1本でいい)のなら、1:9:90 となります。)
技術の進歩がありますので、1:9:90 辺りから始まり 1:3:9に向かって変化して行くのでしょう。 ハロゲン電球は数十年の歴史がありますので、コスト面では既に熟成しています。これを「1」としています。
L・E・D は、開発の真っ最中であり、コスト高は否めない時期です。ハロゲン電球単体との比較では、約30倍(15~45倍)と見積もっていますが、その30倍に近い時期に、現状はあるものと考えられます。
H・I・D は量産効果が現れつつ有る時期であり、ハロゲンとの倍率は、次第に、3に向かって次第に小さくなりつつある時期 と言えます。H・I・Dの倍率が小さくなった(例えば「3」になった)からと言っても、L・E・D への技術伝達はタイムラグを持ちますので、 1:3:45 も現実的には有り得る と考えられます。
ちなみに、ハロゲン電球は、12Vのバッテリーで直接点灯出来ますが、H・I・D と L・E・D とは、点灯装置が必要です。その費用も含めた比率です。見積り計算は、”どんぶり勘定法”!。これで結構、”当たらずとも遠からず”の見積りになるから不思議です。

( 細かくなりますので、見積り根拠・計算方法は割愛します。)
  2007年 5月XX日 大山宏

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第38話、熱対策を主眼に置いた[ L・E・D ヘッドランプ ]

ヘッドランプと一言で言っても、形は様々です。ことに光源が、「ハロゲン電球」⇒「HID」⇒「LED」 と変化して来ると、外からは見えない内部の構造にも大きな変化が現れて来るのは、当然でしょう。

今日は、発生熱(:60W程度であると言われる消費電力の)の対策に主眼を置いた場合、LED ヘッドランプの形は如何なるものとなりそうか という乱暴な議論です。勿論、ボディースタイルに良い影響を与える(であろう)新提案でなければ、議論の意味がありません。その前提で本論に移りましょう。

車の形の基本は箱型ですので、ランプの方も”箱型”が底流としてあります。( 外見として見える”レンズ面”の形はいくら丸みを帯びていたとしても、何処と無く、四角っぽく見えるものです。その方が車デザインにマッチするようです。)

四角い箱の内部に熱源を配置した時、その温度分布は如何なる分布になるでしょうか?( 何処が一番温度が高くなるか?という真面目な質問です。)答えは、光源を配置した近辺が一番高温になり易い!

これは、ハロゲン電球の場合であっても、HIDやLED であっても同じ傾向です。特にLEDは、小さな固体光源ですので、放熱を上手くしてやらないと、元も子も無くなってしまいます。《 LED光源は、放熱フィンという馬鹿でかい荷物を(宿命として)背負って生まれて来ているのです。》

『 なあんだ、LEDと言っても、放熱フィンを含めると、ヘッドランプは結局の所、小さくは出来ないのか。』 というような、早計な判断はしないで下さい。それを解決して(クリアーして)行くのが我々の仕事なのですから。

幸いにして、LED光源は、大まかには4つ程度に光源が分かれています。この4つの光源を、何処に配置したら、灯具温度が最も下がり、放熱効果も優れていて、明るいヘッドランプが出来るか、という問題に切り替えてみましょう。

その答えは、箱の4隅の稜線沿いに配置するのが最適であろうと、推測できます。
《 各フィンは、その4隅から外に向かって各々3方向に伸びることが可能です。》
( LEDを後方に密集配置したのでは、放熱フィンは後方にしか伸びて行けません )

リフレクターの方は、どうなるか、というと、各コーナーからランプ中央に向かって延びていくことになります。中央には、走行ビームを配置してもいいし、光量不足を補う意味を含めて、H4みたいな、Hi/Lo切り替え式のハロゲンランプを組み込める余地まで出てくるでしょう?

( 更には、暗視レーダー用の赤外投光器を積んでもいい。)構造や部品構成が変れば、デザインも おのずと変って来ます。”10年後(?)のヘッドランプ”の形が見えたような気がしませんか?    2007年 3月 XX日 大山宏

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2009年6月15日 (月)

第37話、Zビームパターンの後続車輌が眩しいのでは?

『・・、私の車は運転席の着座位置が低いこともあるためか、後続車輌からのヘッドライトの光を非常に眩しく感じます。・・・』という御意見をある方から頂き、”ハタ”と気が付きました。単に”まぶしい”と言っても、誰がそう思ったかで、対策の方向が、ガラッと変ってきます。この方の場合は、運転者本人だったのですね。
(第31話での”まぶしい”と感じた人は、歩行者もしくは、対向車の運転者でした。)

バックミラーには”傾ければ眩しさが軽減できる機能が常識化”していますが、フェンダーミラーにはその機能の付いたものは見かけません。

《 それを、廉価に商品化するのも一つの対策になりそうです。》
まあ、それはそれとして(後続車輌からの)眩しくないランプの有り方を、ランプ生産者の立場で、真面目に考えてみましょう。

仮説1{ Zビームパターンの方が、15度パターンよりも眩しい。}
仮説2{ 2輪の後続車が眩しい。}
仮説3{ 後続トラックのライトが眩しい。}
仮説4{ 10m~20m位、少し離れた後続車が眩しい?}
仮説5{ 早く走れとばかり、後ろにへばりついて来る後続車ライトが眩しい。}

仮説5は、多分走行ビーム急き立てているはずなので、こんな車は「お先にどうぞ!」としてあげるのが抜本対策ですね。( もしくは、『 馬鹿にするな 』とばかり、猛スピードで走り去る。貴方なら出来る!?!)

仮説2・仮説3は、取り付け高さを問題視した仮説です。フェンダーミラーの高さに後続車輌のライト高さがあるならば、眩しくても当然と言えます。この取り付け高さに関しては、厳密に議論され、法規化されているはずです( 私は調べたことはありませんが)。

私の経験では、2輪よりも、トラックの方が眩しいと感じることが多いのですが、この仮説2・仮説3については、この位にして置きましょう。

仮説4は、ちょっと変っていますでしょう?これは何を示唆した仮説なのでしょうか?

そうです。後続車のライトの左右位置問題です。

右目からの光か・左目からの光なのか?あるいは、
”中央車線を踏まんばかりに”走り寄って来る車が眩しいのか?それとも、
路肩白線に近い位置にランプがある車?トラックのように車幅のでかい車
路肩白線寄りに片寄って走る癖のある運転者の車・・?。

この仮説4を検討していると、浮かび上がって来るのが、仮説1です。この結論は、人間工学グループの詳細調査を待ってから出すべきでしょうが、私は、最近後続車輌のライトが眩しくなったのは、Zビームの影響ではないかな?と予想しているのですが、

如何でしょうか?

これなら、ランプメーカーとしても、対策の余地がありそうです、15度パターンを、車メーカーに推奨すればいいのですから。

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第36話、”グレアー光で演出するヘッドランプ”

ランプ屋やに取ってグレアーは嫌われ者でした。何故なら、規格はずれになって上司から怒られたり、ユーザーから『 まぶしい。何とかしろ!』と小言を言われたりすることが多いからです。でも、車のヘッドランプでみんなが見ているのは、グレアー光なのです

車のランプは目線より下の方にあるでしょう?ランプの方から見た発散角度で言うと、上向き+30~60°(もっと広いかな +10~80°?)辺りです。ここに、目に入れても痛くないほどの適度な柔らかい光を、ユーザーは望んでいるのです。

その程度の柔らかい光が、ボディーラインとマッチしたランプ部分から出て来ると、「 かっこいい! 」となるらしいです。グレアー光(専門的にはゾーンⅢ)規格は、厳しく押さえられています(看板照明という特殊な照明領域(方向)についても、上限は、同じ規格数値で制限されています)。

ですから、その規格を満足させることはこれまでと一緒なのですが、ユーザーの望む場所(ポーション)から、”意図的にグレアー光を発する演出”が必要なのでしょう。高効率ヘッドランプ(2000LmH/L:愛称エンライトン)の研究を通して、光の合理的な導き出し方が分って来ました。

これからは、どこから見ても、かっこいい光を提供する方向で、この技術を発展させて行きたいと考えています。これが、デザインから入るヘッドランプ設計だと、納得しました。

具体的には、

(1)、2~10mm巾の意匠ラインをレンズ面に、まず最初に配置します。カーメーカーのデザイナーに対しては、「 どこに配置してもらっても結構です。2~3本どうぞ!」と、提案する。
(2)、LEDの光全てを路面照射に向かわせようとするのではなく、その一部を、積極的に意匠ラインに取り込む(導く)ように設計を工夫する。
(3)、太い意匠ラインがあることで、路面に向かう光が少なくなるケースも発生するでしょう。その場合は、「2000Lmという充分過ぎる光が出せるのだから、たとえ、3割カットされたとしても、1200Lm位は出せる!」と、デザイン優先で処する。

こんなところです。

HIDを使っての高効率ヘッドランプは卒業としましょう。”ハロゲンとLEDとのハイブリッド(合わせ技で、2000Lm)”を前提にすると、こんな面白い展開が期待できそうです!

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第35話、”ECO(エコ)に関してランプで寄与出来る方策案”

CO2排出量規制は達成不可能という予想の下、政府は、躍起になって号令を掛けておられます(京都議定書)。特にCO2排出総量の元凶として(前々から)自動車が槍玉に上がっており、燃費向上が各自動車メーカーに求められています。自動車部品を提供しているランプメーカーの立場で、何か寄与出来る事はないかと、私なりに考えてみました。

燃費向上を言い換えると、”高効率化”という言葉になると思います。最終的に、燃費向上につながればいい訳ですから、

1、車体(ランプ部品)が軽くなっても効果あり。

、空力特性(流線型スタイルに沿うランプ)が改善されても効果あり。

3、消費電力が少なくなって、銅線の重さ(使用量)が減っても効果あり。バッテリーが軽くなったら、「1」の軽量化に相乗効果。

、安全性を確保しつつ、総消費電力が押さえられる照明システムが提供出来るならば、それもカーメーカーに取って有り難い提案でしょう。

例えば、コーナーリングランプ機能を兼ね備えたヘッドランプとか、従来4灯式が当たり前の高級車種が、スタイルが斬新に工夫された2灯式H/Lに置き換えられるならば、それも効果大。などなど。

これらを実現する努力はこれまでも行われて来ているはずですが、”御役所の一言”で可能となる(これまで駄目だったことが可能となる)話もあるのではないでしょうか?

例えば、テールランプ・ストップランプの規格配光は、上下±10°左右±20°の規格で数十年前から変っていませんが、上下±10°は、本当に必要なのでしょうか?上方向の+10°は必要ですが、下方向のマイナス10°は不要なのではないでしょうか。

何故なら、運転者や歩行者の眼は、車ランプの取り付け高さよりも高い位置にあるので、不要な光とは考えられませんか?(*1)

自動車が空を飛ぶ時代になったら、元の規格に戻せばいいでしょう? 同様の事は、赤青黄色の交通信号灯でも言えそうです。信号灯は、歩行者や運転者の眼の高さよりも、随分と高い位置に取り付けられています。ですから、+0°以上の方向に光を発するのは無駄ではないでしょうか?(*2)

これら無駄(?)な規格は、経済産業省(国土交通省?環境省?)が、規格変更するだけで、消費電力は即、半分近くにまで、一気に下がるのではないかと”夢想”したのですが、どうでしょうか?

最近LEDを活用した自動車関連のランプが増えて来ています。規格が半分になれば、LEDの必要個数も半減となるのではないでしょうか?この類の話は他にも、もっともっと有りそうですね、街中にも、家庭内にも、、。 

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(*1)、坂道のことは考慮する必要があります。『・・上り坂で前方車両が坂を登りきった平坦路でブレーキを踏んだとき、まだ上り坂の途中にいる後方車両の認知度を考えると、(あながち)無駄な要求ゾーンとは言い切れないのでは・・?』というご意見を頂きました。

確かにその通りです。 但し、それで諦めたのでは、元も子もないので、着眼点”を生かす方向で、考えて見られることを、お勧めします。例えば、”目”の高さがストップランプよりも高い分だけ、下方の配光は下げられる、、とか、ハイマウントストップランプを付けた車では、そちらがこの機能を担っているので、リアーランプの規格は下げてもいいのでは、、などなど。

(*2)、交通信号灯については、法規上主光軸は下向きの要求になっており、上方光についてはやはり坂道が考慮されているそうです。『・・交通信号等については、移動するものではないので、設置される道路状況によっていくつかのバリエーションを用意してもいいかもしれませんね。』とのことでした。いずれにしても、”不可能を可能に”すべく、色々と考えてみましょうね。

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第34話、”一流とは?”

 何年前かの暮れのあるクイズ番組で、「一流の演歌歌手」と「普通の演歌歌手」との違いを議論していました。答えを北島三郎に聞きに行くわけですが、彼の答えは、『 現状に満足せず常により高い所を目指している。』のが、「一流」であり、『 現状に満足している。』のが、「普通の演歌歌手」 とのこと。
 なるほど、と思いました。演歌歌手の所を何に置き換えても通用する話のような気がして、「一流の設計者」とは、「一流の開発者」とは、「一流のデザイナー」とは、と、置き換えてみました。
現状に満足せず、常に、より高い所を目指して努力している のが「一流」の定義!
 うまく言い当てていると思います。
同じような話ですが、昔、”プロジェクトX”というロングランのNHK番組がありました。ご覧になっていた方も多いと思います。私も興味を持って見ていました。ホンダ社が出てきたり、ヤマハ楽器が出てきたり、石川島播磨重工が出てきたりと、毎回、話題は変わるのですが、どの話にも共通する点があるように思いました。それは、
1、成功するまであきらめないという”こだわり”の精神、
2、( 家庭をもかえりみず?)寝食と報酬のことを忘れて集中した時期が、必ずあること。
3、大勢の人の協力によって成功したのも事実ですが、成功には必ず少数のキーマンが存在しており、その特定の人がいなければ、成功しなかったであろうと、容易に想像できること。
 自分の仕事にほれ込み、現状に満足せず、執拗にこだわって、より高みを目指すことが「一流」であり、「成功の条件」なのだなと、改めて思います。
普通の人も成功(会社発展)には必要です。しかし、
出来れば貴方は"一流"を目指して頂きたいと思っています。影ながら応援しています。
  大山宏

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第33話、”ランプ灯具内部で、光が曲がっている?Episode 33, "Lamp light fixture inside the bent light?"

 ご存知のように、光は波の性質も併せ持っています。
そして、ある条件の下では、光は曲がりつつ進むのです。
物理の教科書では、スリットの通過光実験だとか、干渉実験として小難しく(?)説明されていますが、簡単に体験できる方法を、ご紹介しましょう。
 Most of you know light combines properties of waves. And, under certain conditions, light being bent forward.
Slit through experiments in the physics textbook, or as an interference experiment harder (?). Let me introduce the methods described, but you can experience easy.
 Most of you know light combines properties of waves. And, under certain conditions, light being bent forward.

 それは、”指で小さな穴を作って、覗いてみる”のです。指で作るので、いびつなしか出来ませんが、これで結構、光が曲がる効果が確認できます。勿論、親指の先と人差し指の先とをくっ付けるような、大きな穴を作っては駄目です。
人差し指だけを折り曲げて、小さな穴(12mm角程度の穴:3角穴)を作って覗いて見るのです10秒で確認できますので、まず、やって見て下さい。
It is a "make a small hole with your finger and if you look". See the effect is not only awkward hole making with fingers in this fine, light bent. Making a big hole like the groundwork between thumb and index finger which, of course, is useless. Bent index finger only, small holes (1-2 mm square hole: hole 3 horns) make the look. You can make in 10 seconds, so first, please look at.
1)『外の景色(像)が小さくなった』のに気づかれましたか? 
2)指穴をほんの少しだけ動かして見て下さい。《 頭を動かさないように注意しながら、指穴を±0.3mm程度上下させて見るのです。》
 どうなりました?

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第32話、”伊達メガネ方式ヘッドランプ”

伊達メガネというのは、ご存知のように凹凸の無い素通しメガネの事です。あるいは、メガネの縁だけがあってレンズが無く、指が通ってしまうメガネの事ですね。ファッション性だけで見ると、これで結構格好良く見えたりします。

最近のヘッドランプはプロジェクターばやりで、あの分厚い凸レンズのギョロメ感を減ずるため、メガネの縁(周り)のファッション性改善も進歩して来ました。その進歩した”ファッション”のみ、ヘッドランプに残す事を考えて見ましょう。

先日お話した第27話、”凹レンズ式ヘッドランプ”を思い出して下さい。250mm程度(明視距離)にあった反射光像を、凹レンズで25m先に移動したのが凹レンズ式ですが、楕円反射鏡からの反射光像を、直接、25m先に形成すれば、凹レンズは”ただの平板”で済みます。その平板も取り除けば、『 メガネの縁(ファッション)だけが残る。』という理屈です。

完全透明な平板でも、透過率は0.9程度ですので、これを取り除くだけで、ランプ出力が1割UPするという理屈になります。《 メガネの縁は残してあるので、透過率100%の”非常に綺麗に磨かれたレンズ”があるように見える!》

非常に興味の持てるお話でしょう?近眼の人が掛けているメガネ(凹レンズ)は肉厚も少なく、光路をホンの少し変えているだけなので、その程度の光路修正なら、楕円反射鏡(2軸楕円)の方で、賄えるのです。

もっと良い事があります。それは、「”重たいレンズを保持しなければならない”という束縛から解放されて、”メガネ縁のファッション性”の追求がやりやすくなる!」という点です。伊達メガネ方式の利点を整理して置きましょう。

1、”メガネの縁”の形状の自由度が大幅に増える。
2、重たいレンズを保持する必要がなくなる。
3、レンズという光学部品の位置精度を気にしなくて設計できる。
4、色消しレンズ以上に透明なレンズ(空)であり、
                       ランプ出力が1割増加。
5、レンズコストは数百円ですが、この部品コストが削減できる。
6、組み付け工数が削減できる。
7、凸レンズ式に較べて、ランプ奥行きが小さく出来、
          明るいランプであって 且つ、薄型化が図れる。
 利点列記なので、良い点(長所)ばかり書きました。短所(不利点)に関しては、御想像にお任せします。

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《 想像にお任せしますでは少々不親切ですので、追記しました。》
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メガネの縁さえも取り除いたものが、”エンライトン”でした。メガネはかけなくて済めば、その方が楽です。
(”縁”は光の進路の邪魔になり易いのです。昔、眼鏡を掛け始めた頃、メガネの縁で視野が急に狭くなって、不便でした。)

翻って考えると、凹レンズをわざわざH/Lに取り込む目的は、ファッションを別にすれば、   『 メガネの縁を加えても、光の進路を妨げにくくなること 』( 凹レンズ付近の形状が、小さくまとまること )にあるようです。

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第31話、リフレクター式に変えれば眩しさは5分の1に!

何年か前の展示会でのお話です。『・・(昨年の)株主総会で、一般の人から質問があって、最近のヘッドランプは、まぶしくてしょうがない。貴方の会社だろう、あの眩しいランプを作っているのは。なんとかならないのか?との意見が出た。』と、ある方から聞かされました。

多分凸レンズを用いたプロジェクター式のHIDヘッドランプのことでしょう。しかし、光束量が増えたから、グレアーも増えるのだと、単純に考えていいのでしょうか?グレアー規制(規格)に関しては、ハロゲン電球光源も 放電灯HID光源に対しても同じはずであり、その規制内にあるなら眩しさも一緒のはずなのですが、どうして"凸レンズ式HID"はまぶしく感じられるのでしょうか。

無謀運転者が多くて、すれ違いビームで対向車線側が「より明るく見えるように」と、ビームを上げている習慣の下でならば、当然、《光束量が3倍になれば、まぶしさも3倍になるであろう》 と推測されますが、これとは別に(まじめに技術的に)その原因を考えてみたのです。

答えはありました。"輝度の問題"でした。高校の物理の参考書を引っ張り出してみると、

輝度 : 同じ光度の光源でも、光源の面積が小さいほど、輝度は高く、まぶしい。この輝きの程度を表すのに、光度をある方向から見た、見かけの単位面積当たりの光度を"輝度"といい、cd/cm^2 で表す。

とあります。光源の面積が小さくなると、眩しさは増えるのでした。最近のランプは小型化傾向にあり、特に凸レンズ式のプロジェクターは、レンズ径が50~60φ程度と小さく、リフレクター式の従来サイズ(約140φ)と較べると、面積比で”5倍強”の輝度差となります。歩行者や対向運転者がまぶしく感じるのは、当然と言えます。

大よその話ですが、人の感覚は、2割の変化(差)に対しては、"差"として認識しないものなのです。しかし、3割の変化(差)があると、これは明らかな変化として暗くなった、明るくなった、眩しくなった、と判断するようです。2割で緯度の変動を一々気に留めて(認識して)いたら、自然現象の中で生きていくのに、不便だったのでしょうね。

この許容値の2割と比較して、5~7倍の眩しさ変化は、明らかに受け入れがたい異常な変化であり、『最近のランプは、まぶしい、なんとかならないのか。』と非難を受けてもしかたがないという気がしてきました。

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2009年6月14日 (日)

第30話、”虚像と実像”(HID新2灯式)

- お化けにも人格あり。平等に扱われるべき!-

わざとセンセーショナルな副題を設けてみましたが、お化け(ファントム)とは"虚像"の事であり、"像"の事を人格表現してみたのです。 貴方は他の人の眼には実像として認識されていますが、一方あなた自身は手鏡などで自分自身を、"虚像"として認識しています。

貴方のそばに置いてあるローソクの炎も鏡に鏡に映っており、貴方の眼には、あたかも鏡の中で、ローソクが燈っているように見えるでしょう。これを、疑似光源と呼び、その疑似光源からの光を実光源(手で触れることが出来る光源)と同様に、反射させたり屈折させたりして扱うことができます。

以前に反射光像を"てんとう虫"になってもらって軽く触ってもらったことがありましたが、あれは"実像"でした。雲みたいにふわふわして手がすり抜けてしまいましたが、あの手をそのままそこに留めていると、火傷(やけど)をしていたのです。そこに実際に存在する"物"があった証(あかし)です。

この"実像1"を手鏡の手前に造ると、鏡の奥には虚像ができるのは当然なのですが、この"実像1"となる光を手鏡の奥に送り込むと、鏡の奥には"虚像1"が出来、その"虚像1"の反射光像("実像2")が手鏡の手前に出来ることになります。

2灯式ヘッドランプの場合、配光パターンを(走行[Hi]時とすれ違い[Lo]時とで)切り替える必要があります。ハロゲン電球の場合には、2つのフィラメント光源を(同じバルブ内に)設けることが出来、簡単にHi/Loを切り替えることができたのですが、"HID"は放電灯であり、光源は1本しか設けられません。

そこで楕円反射鏡で疑似光源を造って置き、その一部を隠すか隠さないかによって、配光パターンを切り替える方式のものが、2灯式プロジェクターヘッドランプとして一般化しています。

この「一部を隠すか隠さないか方式」の最大の長所は、"簡便"である事に対して、最大の欠点はというと、常時使用しているLoビームが、隠している分だけ暗いヘッドランプになっている事です。

何を伝えたかったか? それは、Loビーム時に最大(最適)出力が出る2灯式HIDヘッドランプの可能性についてです。

反射光像でLoビームを造って最大(最適)出力を出しておき、Hiビーム時には、シェード(遮蔽・遮光板)を開くと同時に、反射光像(実像)の位置を"上から"反射板で押しあてることで、移動させるという 新しい方式の2灯式ヘッドランプの可能性 が出て来た事なのです。

もう少し詳しく言うと、"上から"押し当てた反射板(鏡)の奥に、反射光像を送り込むと、鏡の前(下側)に、その光像(実像)が、飛び出して来る という事です。下側に像が移動したのですから、スクリーン像は、上方に移動する(即ち、Hiビームパターンが得られる)ことになります。

すれ違いビーム配光は、スクリーン下方に大きく広がっていますが、反射板(鏡)の反転作用によって、"スクリーン上方"への大きな広がりに切り替わっていることも、長所として挙げることが出来るでしょう。

国内を走る9割以上の車は、Loビームで走っています。

滅多に使わないHiビームが明るくて 常時使用しているLoビームが暗いランプ』 に対して、

常時使っているLoビームが、Hiビーム並みに明るいランプ』の方が、社会正義性が高いということは自明でしょう。

虚像という"お化け"にも実像と同じ人格を与え実像と同等に扱うと、こんな変わったランプが飛び出して来るのも、ファントムフード(お化けフード)の面白さです。

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第29話、”円筒像を並べる簡便なCATIAシミュレーション”

今日は、簡便的な配光シミュレーションのお話をしましょう。簡便的という意味は、"(明るさで表示される)正式の配光シミュレーションではない!"という意味です。

スクリーンの円筒像を並べるだけの、配光設計の"便利道具"です。皆さんが使われている正式の配光シミュレーションシステムにも付属の機能として この種の便利 Goods があるかもしれません。しかし、少々使うのが面倒なのではありませんか?

そこで、私は、CATIA-V5の画面の上に直接描かれる簡便システムを作ってみました。それがこれです。

Photo

この絵は2回反射システム(ファントム式ヘッドランプ)の絵です。楕円の第二焦点付近に出来る反射光像が、円筒を重ね合わせた形で表現してあります。

同時に、その場所を通過した光が、第二リフレクター(放物系反射面)上のどの辺りで反射されるのか(その位置と形状)、

更には、数百分の1に縮小された、25mスクリーン(球面スクリーン)、の3つを同一のCATIA(3D)画面上に表現しています。

この絵は、CATIAの寸法を変化させる(例えば、第一焦点の位置を変えるとか、[F値]を変更するとか、2軸楕円の大きさを変更する など)に対して、数秒以内で動くのです。

勿論、CATIAの絵自身も変化すると同時に、"3組の円筒群像"も、一斉に動くのです。便利でしょう?

---------------------------------- 参考 ---

LEDが光源の場合、円筒の代わりに、(1mm x 4.3mm)の長方形 or"LED かまぼこ形状"で置き換えればよくて、この方が簡単!(より軽いシステムになります)。私は、最初の構想段階では、この軽いシステムを自分が書いている3D図面の中に必要個数コピー転写しておき、活用しています。

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第28話、”LEDヘッドランプの指向特性:ラグビーボール”

「LEDヘッドランプにおいても、リフレクター系の光学部品は横長になるの?」という質問を、以前にある方から頂いていました。これまでのお話(1~27話)は、ハロゲンランプとか、放電灯(HID)ランプを使うことを、"暗黙の了解事項"として、お話してきました。

この方の質問にお答えするためには、「LED光源の指向特性が、ハロゲンやHIDとどう違うか」に関して、お話する必要があります。

既にお話したように、ハロゲンやHIDは、長さ:4~5mm、直径1φ程度の円柱光源(略線状光源)として扱えます。その指向性強度分布を、地球儀みたいな見方(経度緯度)で立体的に捕えると、"リンゴ"のような形になります。《 北極・南極方向が、縮み込んでいる強度分布です。》

これに対して LEDは面状光源であり、その指向特性は正面方向(仮に北極方向に強い光が発せられ、赤道面に近くなるに従って急激に出力が落ち込み、[ 背後の南極方向には光が出ない ]という指向特性分布を持っています。

あえてその形状を言えば、"ラグビーボール"のような形状です。(サッカーボールに近いかも、。ある人達はこれを"ランバーシアン"という言葉で呼んでおられます。)リンゴとの対応で説明すると、リンゴを真半分に割って、その半分を"ラグビーボール"で置き換えたような形状といえば、イメージ付きますか?

LEDは面状光源であり、本来は小さなチップ(0.3mm x 0.3mm程度)です。ヘッドランプ用への適用が検討され始めてから、[1mm x 1mm角]のチップを4つ並べて光源とする方法が定着して来つつあります。全体で、[1mm x 4~5mm]の大きさです。《 それが適切かどうかは別として、円柱光源サイズに似せてあるのです。》

前置きが随分と長くなりましたが、LEDでリフレクター系のヘッドランプを造る場合、そのリフレクター方向に"ラグビーボール"を向けます。LED光源からリフレクターまでの平均距離が"平均光路長"(第1話)であり、光源サイズが似通った寸法(≒1φ x 5mm)にしてあるので、"平均光路長"は、50mm程度以上が必要です。

それ故に、『LEDにおいても、リフレクター系ヘッドランプでは、横長になる。』 と考えてよさそうです。

リフレクター系では奥行きは薄くできます。これに対して凸レンズ系では、凸レンズの背後方向に、どうしても光路長程度の長さは必要となります。

光源がLEDの場合であっても、その傾向は同じなのです。ご納得頂けたでしょうか?

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第27話、”凹レンズ用反射鏡”

以前、凸レンズのプロジェクターシステムで用いられる反射面について、2軸楕円のイメージを説明しました(第12話)。今日は、凹レンズ式ヘッドランプシステムで用いられる反射面に関して説明させて頂きます。

反射光像を"スクリーン方向に向けて送り出す(作り出す)"という同じ目的を持つものなので、その反射面外観は、凸レンズ用も凹レンズ用も(一見したところ)同じに見えます。

(1)、凸レンズシステム用と、凹レンズシステム用との違い

前方スクリーンに対して反対側(レンズ背後)に"原像"があるのが凸レンズ用、前方スクリーンと同じ側(レンズより前)に"原像"あるのが凹レンズ用です。

ヘッドランプの場合、スクリーンは前方にあります。余談ですが、凹レンズを用いるガリレオ式望遠鏡では、見ている人の眼の前の前方25cmに仮想のスクリーンがあって、そこに出来る"虚像(原像)"を、人は見ているのです。しかし、光の進行方向という基準で見れば、ガリレオ式望遠鏡であっても、『凹レンズ(接眼レンズ)を越えた所に原像があること』に、変わりは有りません。

(2)、凹レンズ用2軸楕円の第二焦点

故に、凹レンズ用システムでは、凹レンズの 約25cm前方に、第二焦点を位置させます。 [25cm] と あえて言ったのは、"明視距離"を持ち出す事で、そこに設定される凹レンズの肉厚を、近眼の人が用いる凹レンズ(眼鏡)でイメージさせよう との意図です。 第一焦点は、原像付近に置きます。

(3)、凹レンズ用原像

第一・第二焦点が決まると、原像が、凹レンズの25cm前方に映し出される事になるのですが、凹レンズに入射しなければ、スクリーン像形成に寄与できません。今は、『原像が実は反射光像であって、適度なシェードでカットされ、形が整えられていて、その現像からの光は2軸楕円で反射後、全て凹レンズに入射出来る。』としておきましょう。

(4)、変な話になりました?

2軸楕円の話をしていたのに、2軸楕円でなくて"普通の回転楕円"で 原像が凹レンズを通してスクリーンに写像出来る話 になってしまいました。それでは、凸レンズシステムとの違いはいったい何処にあるのでしょうか?

1)、主光路比較 ・・・ 主光路が大きく(おおよそ直角程度に)折れ曲がっているのが、凹レンズシステム、 主光路が折れ曲がっていないのが、凸レンズシステム。

2)、原像以降の"光のロス比較" ・・・ 凸レンズシステムでは、凸レンズの内外表面で起きる反射ロスのみ。 凹レンズシステムでは、凹レンズの内外表面での反射ロス+楕円面での反射ロス。

これだけ見ると、楕円面での反射ロスが増えただけであって、凹レンズシステムの方が暗いランプになりそうですが、実は逆なのです。

皆様ご経験されている事ですが、凸レンズシステム(プロジェクターヘッドランプシステム)では、全反射の可能性もあり、通過率が意外に小さい! 特に、左右拡散角度を稼ごうとすればするほど、通過率(透過率)は下がるのです。

(5)、これに対して、凹レンズシステムでは、全反射は置き難い。

何故か? ・・・ 光線追跡の線を1,2本描画して頂くと納得頂けるのですが、凸レンズの方が、光線を大きく折り曲げているのです。

凹レンズでは、元々の像が凹レンズの前(250mm)であり、その像を+25メートル前方に移動させるだけで済む("角度で言えば数度の方向修正で済む")のに対して、凸レンズでは、"+数十度の仰角で進行中の光を、マイナス数度の方向にまで"、大きく変える作業を行っているのです。

この事を考慮すると、2)の光のロスの比較においては、『凹レンズシステムと凸レンズシステムとは、"どっこいどっこい"もしくは、凹レンズ式の方がロスは少ないらしい。』 と 結論付けられるのです。

(6)、奥行き薄型という観点から見ると?

1)、で、『主光路が大きく折れ曲がっているのが、凹レンズシステム』と述べました。 そうなのです。凸レンズが常識のヘッドランプの世界に、わざわざ凹レンズを持ち込もうとした訳は、"奥行き薄型化の可能性を探る"意図があったのでした。

凸レンズシステムでは、どうしても奥行き方向に長く長くなって行きます。普通に設計すれば、180mm(C-8置き)、短くても130mm(C-6置き)。 特に、遠方視認性を高めるべく、レンズの焦点距離を長くすると、それがダイレクトに奥行き長さに影響して来ます。

これに対して 凹レンズシステムでは、主光路が折れ曲がっているため、100mm程度の奥行で済むのです。(最小は70mm程度?)。遠方視認性を高めるべく、楕円の大きさをF=60mm程度に設定したとしても、奥行きは、120mm程度以内に収めることが可能と、分かって来ました。

長くなりましたので、今日はこの辺りで お仕舞い とします。

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第26話、”小窓(穴)は疑似光源?”(正反射率・全反射率)

以前に、”拡散光(第8話)”を書いていた時、『我々が眼にしている風景は、ほとんどが"完全拡散光"なんだな。』と思ったのです。

『でないと、見る方向によって 色や明るさが大きく変わってしまうじゃないか。太陽光の"正反射光"とその"影"以外は、意外に落ち着いており、ほとんど変化無く見えるではないか! これで絵画は成り立っているのだな。』と思った訳でした。

そこで、この考えに立って新奇な(合理的な)シミュレーションが出来る可能性を考えてみました。

一つ目は、LED光源シミュレーションです。 現在のLEDヘッドランプシミュレーションがどのような構成で組み立てられているかは置いておくとして、1mm角のLEDチップ素子は面光源(現実には中央が少し盛り上がった"かまぼこ"状の光源)ですので、そこから"見かけの面積"に比例した光が出ている!と仮定して、シミュレーションを組み立てるのが、自然ではないでしょうか?

2つ目は、2回反射光の"窓の大きさ"対処策です。 複数回反射のヘッドランプに関しては度々お話していますので、"耳にたこ"が出来ているかもしれませんが、楕円反射光が放物系反射域に進入する通路には、"小窓(穴)"があります。

その小穴から内部を覗いて見ると、まず目に付くのは「光源(光る部分)」であり、それを取り巻く「ガラス管」です。内部は鏡面仕上げですので、光源が"お化け(ファントム)"のように巨大に映って見えます。

"お化け"のように映って見えるということは、その窓穴に向かって反射光が集まって来ていることを意味します。(そうなる様に 第二焦点が置いてあるのです。)

その他にまだ何か見えませんか?(見えるでしょう?) そうです。『光源を取り囲んでいる幾つかの楕円面(部分反射面ピース複数枚)が見えている。』はずです。貴方が覗いているその穴に向かって、"拡散反射光"が送られて来ているのです。そして、その反射光も、放物系領域(第二反射面領域)の中に入って来ていたのでした。

ちょっと横道にそれますが、強烈な反射光は正反射光(:入射角と同じ方向に飛んで行く光)と呼んでいます。この正反射光以外に拡散反射光があって、それらを合わせた反射率のことを、全反射率と呼んでいます。

[全ての方向に反射された光束量]÷[入射光束量] x 100=全反射率

某氏の測定によりますと、テストピースの正反射率は、75%前後 に対して、全反射率は88% だったとのことですが、88-75=13% が拡散光という計算になります。《約1割強の拡散光が、小窓(穴)から出射されていたのでした。》

このシミュレーションは、どうすれば可能でしょうか? それは、「小窓(穴)を仮の平面光源としてシミュレーションを行い、従来のものに加えればいい。」ということになりますね。

但し、単純に加えたのでは、出力オーバーになります。これまでは、反射率を85%としてシミュレーションしてきたのですが、これからは楕円面での正反射率を75%にし、仮平面光源(穴)の出力を13%とすればよいのでしょうね。

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*1)、シミュレーションと実測とには開きがあります。以上のように改善すれば、最高光度(マックス光度:ヘッドランプ正面方向の一番明るいスポット部の光度)の現状落ち率(2割)が、全光束の落ち率(約1割)に近づいてくる(同程度になる)と思います。

*2)、最後に残る"全光束の落ち率(約1割)"が、「アンダーコートの面の乱れ」+「光が灯具内で曲がるという波動効果」の影響という勘定合せになるようです。

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第25話、某氏が考案した”上手い立体角設定法”

何が上手かったか、というと、"等立体角の穴の開け方"が上手かったのです。 地球儀を見て下さい(思い浮かべて下さい)。そこには、経度と緯度(経線と緯線)とが、何本も引いてあります。その升目を見較べてみて下さい。北極(南極)に近づくにつれて、段々と升目の横幅(経線巾)が、狭くなっているでしょう?

その分だけ、立体角は小さくなっているのです。(高緯度地方は、立体角が小さくなっている)。(*1)

シミュレーション計算をコンピュータにやらせる場合に、光の放射方向に合わせて正確に立体角計算をしなければならない訳ですが、高緯度地方になるほど、立体角が小さくなる(北極近くでは、ゼロに近くなる)。

某氏は、そこで"うまい方法"を編み出されたのです。それは、『高緯度地方になるに従い、立体角を同じにすれば、計算時間が短縮できる。』と考え、提案されたのでした。

前回の半径1メートル球面に穴を開ける例で お話すると、穴のサイズ(穴面積)は、全く一緒とし、高緯度地方になるに従って、穴の個数の方を小さくしつつ、結果的には、球面全体が、面積一定の穴で埋め尽くされたような、立体角モデルです。

当時の配光シミュレーション開発プロジェクトでは、この提案を即、採用しました。20年近く経った現在も、その考え方は(脈々と)プログラムの中で生き続けているのです。一旦プログラムの中に取り込まれると(それは当たり前になり)空気みたいな存在となってしまうものです。

空気ならまだしも、"有る事事態が忘れ去られてしまう運命"をたどることも、多々あります。今となっては小さな工夫でしょうが、こんな積み重ね(蓄積)が、大きな差となって差別化が図られるという事、覚えておいて下さいね。

(*1)----- 《 高緯度地方は、立体角が小さくなっている。》 -----

「緯度線・経度線で分割された表面積エリアの”形”」は、台形(少し丸みを帯びていますが、台形に似た形)をしています。台形の”高さ(h)”が、緯度線間隔  h = R・Sin( δθ ) ≒ R・δθ で、一定です。ここで、θは緯度であり、δθは、その分割角度です。

一方、その台形の”底辺”の長さ(a)は「地球儀を”極方向から観測”した円弧の長さ」と同じですから、a = R・Cos(  θ ) 、”上辺”の長さ(b)も、 b = R・Cos( θ+δθ ) という具合に、高緯度地方になるに従って、台形の横幅はCosθ分だけ狭くなったいます。

分割を細かくしていけば、丸みを帯びた台形は、限りなく四角形(台形)に近づき、その面積は、よくご存じの 台形公式 S= [ 底辺(a)+上辺(b) ] x 高さ(h)÷2

と表せます。この面積Sを、R=1として計算したものが、立体角です。[ 底辺(a)+上辺(b) ] ÷2 が、平均としての横幅になっています。これに、高さ(h)を、掛けただけ!

---- 以上です。---- (このメルマガ教室は、小学校?中学校?大学の教室だったか? 小生にも よく分らなくなって来ました。)

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第24話、”立体角とは 一体何ぞや?”

 辞書を引いても、参考書を読んでも、仲々納得がいかない用語のひとつに、"立体角"という幾何学用語(言葉)があります。『 習うより、慣れろ。』と、私も自分自身をごまかして何年か過ごした時期がありました。 今日は、その"立体角"という用語について お話したいと思います。
 A terminology dictionary, reading, not convinced relationship has "solid angle" of geometric terms (words). "Practice makes perfect. "And there was a time I also cheat myself and spent some years. I think today, the term "solid angle" want to talk about.

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第23話、”鳥肌が立つ話”、(グラフ化・近似式化)

先日(第21話)で、フィラメントコイルをイメージ観測してもらいました。それを式で表すと、複雑怪奇な式になります。(鳥肌が立つ方もおられそうなので、その式を提示するのは止めました。)

(この式は)30年前に、実験計画法を駆使して取ったデータから、割り出したものです。今日は、その式をどのようにして割り出していったかに関して、御紹介をさせて頂きます。

要は、『データをグラフ上にプロットし、それに近似式を当てはめて整理』していったのです。「最小2乗法を当てはめたの?」 ⇒ 違います。最小二乗法の観点に立ちつつ、もっともらしい式を割り付けていったのです。

「もっともらしい式はどうやって?」 ⇒ どこにも書いてありません。自分の頭で現象を分析し、『この現象に対して最も適切な式の形はこうだろう、、』と想像し、当てはめていったのです。想像するやり方・考え方は、第20話・21話にて既に紹介しました。

ファソラシドれみふぁ・・・

は覚えておられるでしょう? 先に『こうなるはずだ。』と予測してから、グラフ分析にかかるのです。

「データがバラバラなので、何処から手を付けていいのか分かりません。」 ⇒ 大きな傾向から取り除いていくのです。例えば、COS(θ)に近いカーブの"大傾向"をまず、式化して、データから取り除くのです。残ったデータは、特殊減衰振動のデーターでしょう?

「COS(θ)を割り当てたけど、減衰振動データにならない?」 ⇒ COS(θ)カーブを機械的に当てはめたのでは駄目です。減衰振動が残るように、近似式カーブを"手書き"して見るのです。その"手書きカーブ"に近い式の係数を割り出していくのです。

COS(θ)に近い近似式としては、Y=C1*θ^8 + C2*θ^6 + C3*θ^4 + C4*θ^2 + C5 位が、適当でしょう。( 「θ^8」は、θを8回掛ける印です。) この式は左右対称形の性質を持っています。(奇数回の掛け算では、グラフに"非対称性"が現れて来ます)。

「減衰傾向は現れて来ましたが、データがバラバラです!振動傾向なんて、とても取り出せそうにありませんが・・?」 ⇒ そこを取り出すのです。いや、取り出せるように、実験計画法を用いて、計画に組み込んでおくのです。

ということで、やっと、"実験計画法"の話にたどり着けました。 コイルの視面積の変化は、次の 3つの"無次元数"の内の2つを決めることで、捕えることが出来ます。

(UCL/CL) : 巻き込んである素線の長さ(UCL)を、コイル長さ(CL)で割った値(無次元数)

( MD/d )  : コイル内径(MD)を、素線径(d)で割った値(無次元数)

(PP/100)  : ピッチ%(PP)を小数表示した値(無次元数) = コイル1ピッチを素線径で割った値( 密着巻きの時は PP/100 =1 )

《 3つの内の2つを決めると、残りの一つは自動的に定まります(詳細は別途)。》

この影響が現れるように、実験計画しておけば、結果として、"特殊減衰振動"が取り出せるという訳です。

私は、6つの組み合わせを作り、各10本、合計60本のランプを試作させてもらいました。その各10本のうち、姿形の整った最高出来栄え品(各2本)を配光測定したのです。このように予め計画し、試作・測定したデータでしたから、"グラフ分析・近似式化"によって、特殊減衰振動の近似式が作り出せたのでした。

皆さんが用いられている配光シミュレーションのソフトにも、組み込んであります(白熱電球はハロゲンランプの話でした)。貴方の現在のお仕事とは直接関係もないような古臭い話で、少々恐縮でしたが、"近似式化・グラフ分析"というテクニック(思想)をご理解頂きたく思い、紹介させて頂きました。

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第22話、”HID光源は、ロシア人形マトリョーショカ?”

HID光源は放電現象を活用した光源なので、その光っている部分の形状は明確な境界を持っておらず、"強烈な光を放つ雲"みたいなものです。

自動車用ヘッドランプに用いられている HID の外径は、1.5φ x 5mm程度で、ハロゲン電球のフィラメントコイルに概略寸法が合わせてあります。バルブは2重管構造であり、4φ程度の内管(楕円体)を、9外の外管(円筒)で包んであるというものです。

1)、放電現象が起きている内管の中では、管径が小さいにもかかわらず、"熱による対流現象"も起きています。そのため、光源としては、細い円柱が少し上に曲がった、弓なり形状(繭型:まゆがた)をしています。

2)、それに加えて、内管壁・外管壁のガラス管反射が加わって疑似光源が出来ている事 も さることながら、

3)、茶褐色のハロゲン沈着物が内管の下方に発生するという現象や、

4)、弓なり形状の中心付近は青白い(温度が高い)光色、内管壁に近くなるに従って赤っぽい(温度の低い)光色が出てしまうなど、

配光シミュレーションソフト(考える道具)を造る立場からは、まことにやっかいな光源でした。「雲をつかむような話」という表現がありますが、まさに、その言葉通りの研究テーマだったのです。 結局、当時のプロジェクトチームが採用した解決策は、以下のような方法でした。

1、反射光像を上面視と側面視とで測る。("写真を撮る如くに"強度分布を細かく計測する。) ・・・これは当然の一歩。

2、その分布に合うように13層の被服をかぶせ、上面視でも側面視でも、実測データとほぼ一致するような光源モデルを、コンピュータ内部に造る。・・・("ロシア人形型"という新案。)

3、ある方向への強度分布は、その方向から見た時の分布を瞬時に計算で求める。・・・("写真方式"という新案。)

3番の"瞬時に計算する"工夫には、『山登り法・山下り法』というプログラム上の工夫など、プログラマーに取っては(ゲームソフトを開発するような)面白い工夫もありましたが、造形的な面白さは何と言っても、2番の『 ロシア人形"マトリョーショカモデル" 』でした。

人形の中に、一回り小さな人形が、その中に更に小さな人形が、、という"あれ"です。あれをヒントにして、光源モデルを組み立てたことでした。そして、分布を求める計算のルールとして、『より小さい人形から出て来た光線は、それよりも大きな人形の外皮を通り抜けられるのだ。』 を 設けたのです。

この突飛な発想によって、世界最高のHID光源モデルが出来上がりました。あたかも写真を撮る如くに という意味で、"写真方式"という名称で(社内には)浸透しています。

後日談ですが、米国SAEショウの論文発表の会場で、演台に立った Kawaguchi 君が、ラインビームヘッドランプの開発に使用した"光源モデル"を説明した時のことです。100名以上の満席会場内、誰もがチンプンカンプン? という無反応の表情でした。

そこで、Kawaguchi 君は おもむろにポケットから ロシア人形 を取り出し、『我々はこの計算システムを、マトリョーショカ と呼んでいます(英語)』としゃべりながら、人形の中から人形を、更にその中から人形を、取り出して見せたのです。その途端に会場内は拍手喝采に包まれたそうでした。

見えないものを人に説明したり、新しい概念を他の人に伝えるのは難しいことです。理屈では仲々受け入れてはもらえないのですが、相手の知っている知識に働きかけると、意外に"すんなり"受け入れられる ということですね。

国境を越えて(言葉の壁を越えて)思想を伝えられた好例 として、参考にしてもらえるなら幸いです。

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参考 : このHIDモデルを作成したのは、1997年頃でした。当時のコンピュータ性能は 現在(2009年)のものと較べ、数千分の1 の性能であり、光源各部の色の違いまで組み込むことは、実用的ではありませんでした。"十二単(12ひとえ)"の如くに、13層のそれぞれに[ 温度と光強度 ]に合わせて、色を付けるというプログラム変更も可能です。

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第21話、”小波が指向特性に出現”(実験計画法の紹介)"Wave-oriented characteristics appears in" (introduction to design of experiments)

 "弦巻(つるまき)バネ"の絵を頭に思い描いて下さい。 そうですね、長さは5cm位で、外径は15mmφ程度、素線の太さは3mmφとしましょう、ターン数は20巻き位。
 描けましたか?
 あなたは絵心をお持ちのはずなので、きっとその絵は、斜めから見た"弦巻バネ"の絵を描いておられるはずですね。それが、標準的なフィラメント光源を、10倍に拡大してみたときの"絵"です。
 (Coiled) spring "of the picture Please mind to head. Well, about 5 cm in length, the diameter is 15 mm, diameter about 20 winding number of ranks and the wire thickness is 3 mm. diameter.  Now been drawn? You mind drawing should have, so surely the picture seen from diagonal "coiled spring" of it should draw a picture. It is a "picture" when it tried expand 10 times standard filament light sources.
 両端に電圧を加えて、電流を流してみましょう。少し"赤み"が出て来ました。ジュール熱が発生してコイルが温まって来たのですね。 もう少し電圧を上げてみましょう。フィラメントが白熱して白く輝いて来ました。(だから"白熱電球"と呼ばれます)。
 Add the voltage at the ends and let it sink current. "Red" came out a little bit. It is the Joule heat is produced, came to warm up the coil. Let's raise the voltage a bit more. The incandescent filament, came shining white. (So called "incandescent").

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2009年6月12日 (金)

意識改革から始める、3倍の効率アップ作戦。TOYOSAKA:豊栄町 大山宏 Hiro. Oyama

2019/ 6/07 北部地域包括支援センターの皆様へ。このTOP記事を読んだらどなたでも結構です、即(大至急)080-6559-6060まで電話を頂けますように、宜しくお願い致します。
1998/12/01今から21年前に書いた記事です。私(大山宏)がスタンレー電気(株)の技師長を務めていた時書いた、ノンフィクション・ストーリーです。今のあなた方にはきっと参考になると思いますので送ります
小説「ここはどこ?私は誰?」(最終章)
No.8 意識改革から始める,3倍の業務効率アップ作戦。
 炬燵
(こたつ)にあたりながら、宏は"X"プロジェクト(最終日)用の"3倍効率アップ作戦"の文章を、以下のように校正した。

ヘンリー・モルトン・スタンレーへの回帰
 約束事。契約事・ルールを"自分は守る"意識改革 … チャージ休暇の報告書提出が義務付けられていますが、貴方は提出しましたか?少し前の統計ですが、5人に一人しか提出されていません。『周りの人が提出していないから自分も出さなくていい』とは、何処の国のルールですか。村社会からはいいかげんに脱却しましょう。チャージ休暇制度は副社長の提案から始まり、他の会社に誇れる良い制度です。感謝の気持ちを伝える事が重要です。
 感謝の気持ちが持てない、素直に伝えることが出来ない所に「明るい社会は育ちません。ある会社にはなり得ません。これを読んだ貴方!すぐその場で書いて下さい。それが我が社の改革の第一歩です。30分あれば紙切れ一枚位の文章は書けるでしょう。直ぐに実行して下さい。
 だめ押しにもう一言。 書こうか書くまいかと悩む時間、村仲間で相談し合う時間があれば、書けばいいじゃないですか。プレゼントしてくれた人が「報告して下さい」と仰っているのですから。

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No.7 お役所的参入障壁を破るには・・・

《 Re: 》 この自己紹介なら100点満点。こんなサクセスストーリーの自己紹介に反応しないと言うのは???? もうその技術者達は先がない。学校の研究じゃないんだと機会があったら喋ってくれ!!(・・・)製品じゃないが、完成した頃にはもう遅くちゃ開発費が回収できない価格になってるんだ・・と。すなわち技術開発にはタイミングがあるんだよ!いついつまでにというタイミングがね!
 この人達は自分が開発したものが世に出てその喜びを10年間感じない人達なんだ。これらは別の職場へ転属すべしという講演を思い出した。貴君が心配していることはない様に、私が直接指導に行くので安心しなさい。  Ryuuより 
 誤解は解け、宏はほっと一息ついた。しかし まだRyuu殿は「直接指導に行く」と言っておられる。
これをされると話がややこしくなる。なんとかしなければ』とは思ったが、こちらの方は司令官、副司令官に事情を話してあるので二人に(下駄を預け)、宏は頭を切り替えて、取り合えずCグループの作業に専念することにした。

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No.6 幾つも幾つも夢を見た。

過去の思い出の断片か、未来でこれから起ころうとしている出来事なのかさえも区別が付かない位に、いくつもいくつも夢をみた。
6階食堂の外で
 宏と誰かが寒空の下で話をしている。相手は副司令官らしい。宏は例によって感情が激し、ボロボロ涙を流しながら訴えている。「誰が私を選んだのだ? どうしていつもこんな貧乏くじを引かされるのか! 私は確かに豚だよ。おだてられれば木に登る豚だよ。3年半前に煽てられて木に登った。」
「しかし危険を感じて木から飛び降りて、ほうほうの態で元の檻(おり)に這い戻ったんじゃないの。今回また煽てられて木に登ったら諺(ことわざ)が変わってしまう。 [豚はおだてりゃ、何べんでも木に登る] とね。」「・・・」「K重役とは 人事部にいる時に話した以外で 言葉を交えたことは ほとんど無いんだ。入社以来15年間だよ。H専務とは話をしたこともなかった。彼らが私を「適役」と指定する訳がないじゃないの」「・・・」

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No.5 龍神池のRyuu殿の逆鱗に触れる。

事件は突然 起こった。 11/05 この日、Cグループ5名で電子部門某部門長のお話を聞かせて頂いた。「自動車部門による試作灯具での看板照明テスト中」 との情報も頂いた。事件が起こったのはその夜だった。
夕方6時頃、テーマ選定会議がまだ議論半ばであった。突然、「大山君 Ryuu殿がお呼びだよ」 と大声で呼び出しを告げられた。一瞬、場に緊張が走った。慌てて宏は会議を中座し、雲の上に上がっていった。
Ryuu殿のお部屋にて Ryuu殿がにこやかに話しかけられる。「君からのメールを読んだよ。君のメールは君の開発するヘッドランプと一緒で(複雑怪奇で)良く分からん。説明してくれ」「分かりました」。Ryuu殿がメールを開かれる。先日送ったメールだ。
「コロンボ流でメールを20通各個人宛てに送ってみたのですが、わずか2通しか返事が来ませんでした。・・・」「"キリスト""ヘンリーモルトン""創業者会長"のくだりは?」「いずれも人を大切にという思想の持主であり、我が社の底流にこの思想が流れていますね。それが段々と弱くなりつつあるという風に感じています。 元通り、人を大切にする体質に立ち返らなければならない時期が来ているようです。でも、経営層の方々が急激に動かれると血が流れ、より不幸な状態にも陥りかねません。経営陣の方々の"苦しみ"が分かる気がしますと書いたつもりでした。」
「そういうことか」。 その時携帯電話が鳴り、Ryuu殿が話し始められる。しばらくメール画面をみながら『次をどう説明しようか?」と考えていた。電話はしばらく続きそうであった。
ふと、『あのグラフをふんだんに使用した資料をお見せすれば分かりが早いはずだ』と思い付き、Ryuu殿の秘書を呼んで、「人事課長に、例の資料を持って来てもらって下さい。大山が3年前に預けて行った資料、と言えば分かるはずです」。資料ファイルは直ぐに届いた。
 秘書嬢がファイルを持って部屋に入って来る。 電話は終わりかけていた。
「彼は外に居るんでしょ。入ってもらってよ」と秘書嬢に言いかけた直後だった。「誰が入れと言った!!!」と大きな雷が落ちた。逆鱗に触れたらしい。
「私が説明するよりも、人事の人が説明した方が分かりやすいと思いましたもので、。」
君と話しているのだ。!!!」びっくりするほどの怒り方であり、宏は一気に緊張した。( 秘書嬢は出て行った。) 気を取り直し「これが社員の意識レベルを示しています」と、ファイルを開きつつ説明を試みようとした。
そんなもの 見たくもない!!」  宏はファイルを閉じた。

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No.4 集中注意力と分散注意力

パイプは繋がった! 》 秦野にて(10/30)
 H専務からのメールを受け取り、まずはほっと一息。穴が開くほど読み返し"伝令"の意味を読み取った。(解釈に苦しむ箇所は、自分の発信した文章と見比べて意図を推察した)。まるで謎解きのようでもあったが、意思疎通は出来たと思った。有難かった!
次の日の土曜日も終日考え続け、日曜日(11/01)、この3年間 完全に交信を閉ざしていた雲の上のある方宛てに電信(メール)を準備した。
Ryuu殿へ、《 非礼のお詫び&"X"の件
 この15年間ずーッと"陰に日向に"支えて頂き、有り難く思っております。人事部より帰って来て以降、まる3年間、『研究成果を早く出すのが恩返し』と一途に思い込み、お礼のメールさえ打たなかった非礼をおわび致します。先日、H専務からのメールを受け取り、パイプが繋がった事に、ほっと安堵しているところです。

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No.3 待ちに待ったH専務からの返信

チョウゲンボウ殿へ
 先日は、突然の電話にもかかわらず適切なご指導を頂き、有難うございました。決まるべき方向に決まったようで、自分自身にとっても最も自然な方向で対処する決心が付きました。早速、23日に技研にて"X"候補説明会があり、積極的に参加・発言してきました。
 本日 26日は、筑波研に技術指導に行っております。出来るだけ前倒しで行動し、前倒しで自然に手を引けるようにするのが一番と思っております。今後とも、宜しくお願い致します。 大山宏
チョウゲンボウ殿からの Re : 》 私も気になっていましたので、10/21の"ある会議"で、貴殿が選出された背景をH専務に質問しましたら、異質の能力がある人なので、それを期待したそうです。"X"に対する意見を出すことを期待しているようで、"X"の推進責任者までは考えていないようです。貴殿の考え通りの対応でよろしいと思います。
先日は助言ありがとう 》 R氏へ発信。
 落ち着くべきところに落ち着いた、というところでしょうか。参加するからには積極的に参加する腹を決めました。こういう事は最初が肝心です。前倒しで活動をスタートさせました。23日には"X"候補説明会に参加、本日 26日は筑波にいます。11月後半には段々と暇になれば大成功です。祈っていて下さい。何はともあれ、精神面での落ち着きは取り戻せました。協力ありがとう。今後共、よろしく!
《  チョウゲンボウ殿へRe : 》 ご丁寧に有難うございました。短期間で お忙しくなることとは思いますが、ご健康には御留意され、頑張ってください。こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。・・ Rより

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No.2 メール返信率は1割?But no email reply rate was 10% at most?

Re:Oに関する相談事項
 「またミスターOのいらぬ心配が始まった。Oの当社における存在価値は、もう揺るぎ無い地位を獲得しているという事は自覚出来ていると思っていました。いろんな場面でその能力を発揮されることを多くの人が期待しているからこそ、今回の人選となったのでしょう。いつでも私のところへ来て下さい。話をしましょう。  Gより 」
 宏はこの日、意を決してG重役の所に直接話に伺った。重役は快く話に応じて下さり、かれこれ2時間の突っ込んだ話し合いが出来た。「君の言い分はよく分かったが、一旦決まった人事は覆せない。どうしてもやりきれない時には、2,3日、5階に逃げ返ってもいいからやってくれ」
 「SAE論文発表準備、ラインビーム(ヘッドランプ)などの研究開発業務よりも優先度が高いのですか?」「そうだ。全社的なプロジェクトだ。会社も必死なのだ。景気がこれ以上悪くなったら会社自体が危ないのだ。」「分かりました。つらい役目ですがやってみましょう、何処まで出来るかは、はなはだ疑問ですが、。」「そうしてくれるか」「H専務から『・・・・・shite・・』を承っていますが、はっきりとお受けするかどうか返事していませんので(お受けするゆえの)メールを送っておきます」「そうしてくれ」 G重役と別れた後、メールを発信しておいた。
H専務殿へ、《 "X"の件 》   98/10/20 13:15  発信
 「昨日はお声を掛けて頂き有り難うございました。『・・subekiwokoro・・・・』との一言で少し分かったような気が致しました。適役かどうか はなはだ疑問ですが(G重役と相談しながら)やれる処をやってみます。今後とも、よろしく。」
See also worries Mr. O's tooth has begun. I was made aware that present value O our won another unshakable position. It probably was announced because many people expect to be demonstrated its ability in many situations. Please come to me at any time. Let's talk. G "G Executive Office directly asked to talk about the Hiroshi never to this day. Executives readily depending on the story coming, plunged nearly two-hour talk. "Overturn their personnel once was I what you say. Do it can sometimes just unbearable, 2, 3, 5 floor fled back to ""is a priority higher than r & d operations, SAE paper presentation prepare a line beam (head lamp)?'" I got it. It's a company-wide project. It's a desperate company. Company itself is the danger the economy became worse than it is.' I understand. Where possible, or it is very doubtful, but try is the hard part. "" So do "" from H Executive ", and shite, and ' to answer whether or not to accept offer, but clearly the send email (due to)... so" "so me" broke up with the G Board and then was sent to. To the Managing Director of H "from "X"" 98 / 10 / 20 13: 15 outgoing "Government hailed yesterday and thank you." And, 'subekiwo-koro-': ' with now that you've learned a bit in a Word. I'll try do (G Board and sit down) but it is very doubtful whether the post office. In the future, the best. "

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No.1 ここはどこ?私はだれ?"Here is where? Who am I? I suspect dreams of it? ', and Hiroshi thought.

 それは実に奇妙なトランプカードゲームであった。ナポレオンと連合軍との戦いにも見えたが、ポーカーの性格も色濃かった。5人でプレイしていたが、それぞれの後ろに後見人(背後霊 ?)がおり、糸を引いていたようだ。
通常のナポレオンゲームでは、最初に配られたカードで絵札を何枚取るか自己申告し、より多く申告した者がナポレオンとなり副官をカード指定してからゲームがスタートする。 が、しかし、この場合は違った。
 自己申告はするが、誰がナポレオンかは最後まで分からない、決めないでゲームを進めるという。副官指名権はナポレオンが持っているらしい。しかし、ナポレオンが不明なので副官も不明なままゲームは進行するという。更に5人はゲームの最中にも出入り自由で、勝手に食事にいったり睡眠をとったり、旅行に出かけたりする。 外野席には4,000人の観衆がおり、このゲームの結果いかんでは、ギロチンにかけられる者も多数出るという。半ば強制的にスタートさせられたこのゲームの期間は1ヵ月で、ご丁寧にも準備期間が15日付けられていた。5人のプレイヤーの中には日本語を流暢にしゃべる米国人もいたし、他の銀河系から来た宇宙人らしい日本人()もいた。『ここは何処? 私は誰? 私は夢をみているのかな?』と、宏は思った。
It is very strange indeed trump card game. Appeared in the fight between Napoleon and Allied drifted strongly smells of Poker. Had played in five, but behind each ward (Ghost?) And, as was pulling the strings. Games start at the card specify a Lieutenant, Napoleon, declared more than many cards with cards dealt first with Napoleon games usually take the self-assessment. But this case was different. A self-assessment is who is Napoleon or that promote the game until the end, nothing. Deputy nomination rights seems to be have Napoleon. However, as you progress the game remains unknown because Napoleon is unknown Adjutant. Five more people is going in and out freely during the game, went to dinner to sleep, to go on a trip. Bleacher seats 4000 spectators, and that many others depending on the results of this game are taken to the guillotine. Prepare carefully, in the one month period of this game was to start in the middle of forced period 15 date was indicated. Universe who came from another Galaxy, and was the United States who speak fluent in five players in Japan seems to be Japanese (Hiroshi). "Here is where? Who am I? I suspect dreams of it? ', and Hiroshi thought.

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2009年6月11日 (木)

String:ひも(Maupassant), Resistance strategy; Set Bell on the Cat.[猫に鈴作戦; Grassroots] “Here's where? Who am I?"

裸の王様Shinzo Abe is the King naked! 'Shigeru Ishiba' should win the Prime Minister definitely! 2018/09/11 added by Hiro. Oyama
レポート西日本大災害/北海道大地震&停電騒ぎの真っ最中に安倍総理は3期目の総理に立候補しました。本当に日本国の総理大臣ならば『未曽有の大災害に遭遇し、私は次期総裁には立候補しないで、対策に全力を注ぎます。日本国民一丸となってこの危機を乗り切りましょう』と総裁選を辞退していれば拍手喝采を浴びたのです。この度は「トランプをノーベル平和賞に推薦した』とのことです。大多数の日本国民は呆れてモノが言えない状態!
Report: Disaster in Western Japan and Hokkaido earthquake and ran third Prime Minister Prime Minister Shinzo Abe is in the midst of the penny. If the Prime Minister of Japan really "still concentrate on measures have faced unprecedented catastrophe, I do not run for the President next. Japan people work together, let's deal with this crisis, and is bathed in applause after the President declined. Once again "Trump recommended that Nobel Peace Prize ' with the Japan national large majority is appalled, not the State!
  2019 02/19 by Hiro. Oyama

 心ある人々は大人も子供も皆、そう思っているのに、その世間情勢(世界情勢)が分からないのですから、安倍総理は正に裸の王様!です。
PS
、この緊急レポートは発信直後に、世界中の国々の人々が読まれるのですが、安倍総理や内閣府及び日本国の情報機関はいつキャッチするのか、興味津々でしょ。
 以下は、-年前に安倍総理宛てに書き送った手紙です。参考までに添付しておきます。大山宏
 Sensible people both adults and children, everyone thinks so, but I don't know what the world situation (World Affairs) and then
Prime Minister Shinzo Abe is positively naked King! is. PS, emergency reports immediately after the call to read people in countries around the world, but Prime Minister Shinzo Abe and Cabinet Intelligence Office and Japan at any time to catch or interested curious?. Following the 2-years ago is a letter written to Prime Minister Shinzo Abe. Leave attached for your reference.

安倍総理殿、貴方もほとほと困った人ですね。蓮舫さんは責任を取って既に辞任されているのですよ。オバマ大統領も既に心の内で『いつの時点で、ノーベル平和賞を、スウェーデン政府にお返しすべきか』と熟考しておられるというのに、貴方は、反省どころが、世界情勢に関して私は、裸の王様です!』と、・・・

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2009年6月 9日 (火)

久々の散歩--出刃包丁(大人のイソップ-8)

2009、3月13日(金)  夕日が部屋に差し込んで来る時間に、その老人は古新聞の切り抜きの囲碁譜を見ながら碁盤上に白黒の石を並べていた。そこに妻が帰って来た。「たまには運動をした方がいいよ。散歩に行こう。」「・・、そうだね。そうするか。」
 手にしていた碁石を箱に返して、妻と連れ立って近くの公園に散歩に出かけた。「この前のように、勝手に先々歩かないでくれ。散歩なのだから、私のペースに合わせて歩いておくれ。」「半歩下がって歩けばいいのね。」「腕を組めとは言わないが、私と並んで歩いてくれ。足元の花を見たり、山々を見渡したり、ゆっくりと散歩させてくれ。」
 公園の入り口までは、二人はゆっくりと並んで歩いていた。久々の会話がぽつぽつと進んだ。老人は少し打ち解け、最近起こったことを思い出しつつ、胸の内の苦い思い出を断片的に語り始めた。感きわまって目頭が熱くなることもあった。妻の歩速が、早くなった。既に、2歩先を歩いている。( 聞きたくないのか?)
「並んで歩いてくれ。私のそばを並んで歩いてくれよ。散歩なのだから」。2度 3度と、妻にそれを頼んだ。既に夕日は西の空に沈みかけていた。妻は15歩も20歩も先を歩いている。「寒くなったので、先に帰る。」「そうか。私はもう少し散歩してみる。」 『またか』、と思った。
 冬空に暗い夕焼けが広がった頃、老人は重い足取りで自宅のドアを開けた。
「ただいま。」と、ダイニングに入る。妻と目が合う。そこには豹変した妻の姿があった。「何をペラペラとあちこちに言い回っているの。私が狂っているって、あちこちに電話しているでしょう。いい加減にしてよ。」 目は3角であった。
 こんなことが起こるだろうことは公園で予期していた。いつもの事である。義次兄から電話があったらしい。2~3週間前に電話でうっかり「久美子と義長兄の妻とが同じ病気(健忘症)」という話をしていた。義次兄は中学時代の学友でもあって、つい気を許して喋ったのが悔やまれた。その場はなんとか切り抜けた。
 7時頃、夕食を食べ始めた。テレビは点いていたが聞こえない。老人の頭の中は、妻のとげとげしい言葉でいっぱいであった。箸だけが機械的に食器と口との間を往復している。夕膳の焼き魚を半分位食べたところで、老人は急に食べれなくなった。胸が急に苦しくなった。
 慌ててトイレに駆け込み、吐いた。直前に食べたものは、全て吐き出した。それでも横隔膜の痙攣(けいれん)は止まらない。粘液のようなものを”吐いては水洗のコックをひねる”という動作を繰り返した。涙が出るほど苦しかった。トイレにしゃがみこんでいた。
「大丈夫?」
「背中をちょっとたたいてくれ。」1分間ぐらい、妻は背中をたたいてくれた。少し嘔吐(おうと)は納まったように思った。しかしその後、何回もトイレに駆け込み、粘液を吐いた。赤い筋状のものが混じっていた。よく見ると それは"血"だった。胃壁が破れた時の血ではない。多分食道のどこかが傷ついて出血したのであろう。
 30分くらい吐き気は続いた。まだ胸に痛みがあり食欲はなかった。(食台の食べかけの夕食も既に片付けられていた)。老人は寝室の布団に もぐりこんだ。

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2009年6月 8日 (月)

自殺未遂--記憶喪失(大人のイソップ-7)

自殺未遂?         大山(宏・久美子)・綾(長女)  山本夫妻(御主人・奥様)

2009、3/7 6:50 妻の一言で、朝食が喉を通らなくなった。食卓を叩き付けて、宏は安マンションを飛び出した。背後から「そんな勝手な事をするのなら、死んでやる」という言葉が追っかけて来た。一瞬 宏は ためらった。しかし、引き返せなかった。”怒り”の方が勝っていた。
『ガス栓をひねりかねない(近所迷惑だ)。』『隣りの住人に止めてもらおうか?』『否々、それこそ大騒動が巻き起こってしまう』。頭は怒りで割れそうであった。『そうだ、山本さんの奥様に止めてもらおう。それが一番良い。』と思い付き、百メートル離れた山本邸のベルを鳴らす。朝の7時であった。
 
何度も何度もベルを押す内に2階のカーテンが動き、御主人が顔を覗かせられる。「大山です。朝っぱらから恐れ入ります!」との声に応じて、寝巻き姿のまま玄関口に出て来られた。「奥さんに至急お願いしたいことがあるのですが、。」程なく、寝巻きにガウンを羽織った奥様が出て来られた。
「朝っぱらから申し訳ありません。今、私は家を飛び出して来ました。家内は『自殺する!』と、わめいています。ガス栓をひねりかねないので、大急ぎで家内の所に行ってやってくれませんか?」と言いつつ、マンションの鍵を渡した。20年間、家族同士で近所付き合いをしてきた間柄。寝巻き姿のまま奥様は、マンションの方へ駆けて行かれた。
 御主人が宏を手招きされ、ベランダから応接室に通されて、暫くそこで待機することとなった。お茶を出して下さった。事情を説明する必要があった。出来得る限り冷静に”事のいきさつ”をお話する必要があった。
 小一時間後、山本邸の電話が鳴った。奥様からであった。「車修理を頼んでいた人が風邪を引いていて、修理が済むのにあと5日かかるとのことです。5日後の水曜日の朝、私(奥様)と、久美子さん(妻)とで取りに行きますが、それまで待ってくれませんか?」「分かりました。修理の済んでいない車を"強引"に引き取りに行くのは止しましょう。」という事に落ちついた。
 そうはまとまったが、まだ、マンションに帰る気にはなれなかった(妻とは顔を合わしたくなかった)。タバコを吸いたくなった。気が付くと財布と車のキーは持って出たが、携帯電話もタバコもライターも持っていなかった。
 御主人「私は顔を洗ったり歯を磨いたりと、バタバタしますが、ゆっくりしていて下さい。」「申し訳ありません。ちょっとタバコを買いに行ってきます。御主人は吸われなかったのは知ってますが、ライターか何かどこかにありませんか?あったら一つ分けて下さい。」「マッチがここら辺りにあったはず。あった!どうぞ。」「有難うございます。(こんな朝早くでは)タバコは買えても、ライターは買えません。助かります」。宏は街角の”雑貨店”に向かった。
 近くの小さな公園前でタバコを吹かしているちょうどその時、パトカーがスーッと走って来て、その”雑貨店”の角を、宏の住むマンション方向に曲がって行った。宏は慌てて、街角まで走り、パトカーの行方(ゆくえ)を追った。幸か不幸かパトカーは、マンション前をゆっくりとそのまま通り過ぎて行った。宏はほっと胸をなでおろした。
パトカーがマンション前で止まったら、何がなんでも、走り帰るつもりであった。が、もう その必要もなくなった。
 携帯電話を取りに帰りたかったが、まだ妻と顔を合わせるのは嫌だった。その内に、トイレに行きたくなる。朝飯を食べそびれていたので、お腹も空いてきた。既に8時を過ぎていて雑貨店のシャッターも開いていた。
「ミルクティーの熱いやつある?」「これしかないけど、。」「奥の方が、暖かいかな。」と、触りながらそれを取り出す。店を出て、1口,2口飲んだ所で、トイレに行きたかったことを思い出す。『まあいいや。そうそう、公園に簡易トイレがあった。そこで・・』と、公園に向かう。大人数人と子供達が一緒になって清掃作業が始まっていた。多分ドッチボール練習の準備であろう、かまわず簡易トイレのドアノブを回そうとした。鍵がかかっていた。
『しかたない。付近の雑木林で済ませよう。』と、歩いていった。雑木林でも、人々が清掃作業の真っ最中で、とても"用足し"が出来る雰囲気ではなかった。いよいよ尿意は激しくなって来る。『そうだ。この時間なら公民館が開いているはず。そこのトイレを借りよう。』と、うる覚えのその場所に向かう。
 仕事に忙しくて公民館活動(地域活動)は、全て妻まかせであった。迷った末にたどり着き、用足しを済ませる。時間つぶしに展示室を見て回る。油絵・俳句・陶器などが並んでいて、しばしの暇つぶしは出来た。
 どういう訳か、その公民館でも大勢の人達が掃除をしておられた。「何かあるのですか? 今日は一斉掃除日なのですか?」と、聞いてみた。「公民館祭りです。10時から昼までは”映画”があります。午後からは”エレキギター”の演奏会があります。有料ですが、よろしかったら、どうぞ。」「!来ます!来させてもらいます。暇なものですから。」宏は喜んだ。
これで十分暇つぶしが出来る。』『今 9時40分。山本邸にその後の様子を聞きに行こう。(このまま消えてしまっては失礼だ)。』と思って、引き返した。ちょうど山本夫妻が玄関口に出て来ておられた。
「良いのを見つけました。公民館祭りで暇つぶし出来そうです。」「そうよ。主人はこれからその準備のために、公民館に向かうところ!」「そうでしたか。ところで、久美子(妻)は綾(長女)のところに1泊2日で行くと言ってましたが、既に出かけたでしょうか?」「綾ちゃんの所に出かけられたはずですよ。」「そうですか。申し訳ないけど、ちょっと電話で確かめてみてくれます?」
「いいわよ。電話してみて留守ならいいのね。」と言って奥に引っ込まれる。(しばらくして)、「まだ居るみたい。もうじき出かけるらしいわよ。」「それじゃ、"携帯"を取りに帰るのは止めます。このまま公民館に行きます。」「じゃあね。」
 上映映画は3本立てで、その一本が「ちびまるこちゃん」であった。お母さんが贈答用に買って来た高価なお菓子を、ちびまるこちゃんがうっかり食べてしまって、”うそ”の上に”うそ”を重ねていき、最後にばれてしまって、わーと泣き出すというストーリーであった。
 妙に、家内の行状とオーバーラップしていて、おかしかった。ちびまるこちゃんの如くの結末になることを期待する気持ちも、心のどこかにあったようだった

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2009年6月 4日 (木)

34)、現場から消えた女。 「なに、バスが正面衝突?」

重なると言えば、本当に事件は重なるものらしい。今度は田舎の父親が救急車で入院したとの連絡が入って来た。娘の帰国からまだ幾日も経ってはいない、10月初めのことであった。宏の家族は大騒ぎの渦の中に入っていく。

東京のおじさんが亡くなり、部下のお父さんが亡くなり、田舎の親戚のおじさんも亡くなっていた。つい最近では、会社で目をかけて頂いていた重役のお母さんの葬式にも参列したばかりであった。

田舎の母は「心配要らない」と言ってはいるが、当然、「万一のこと」も、頭をよぎる。熱はまだ下がってはおらず、大阪の姉が3日間世話して帰ったとの事。足の不自由な母が、例の頑張り気を起こして無理している様子であった。その母も風邪をひき、熱もありそうな声。

気が気ではない。動こうにも連絡さえもままならない。(話し中なのだ)。つくづく東京と田舎の距離を感じる。妻も宏も勤めがあり、働いていながらも心配だけは2人前にしている。「会社に辞表を出して(田舎に)帰ろうかしら」 「そこまでは田舎も望んでいないよ。そんなことまでされたら、母さんだってたまらないよ」

「長男の嫁はつくづく嫌ね。結婚しなければよかった」 「それは言うなよ。どうせ日本は長男か長女がほとんどの国なんだし、。」 感情が高ぶるとすぐ、この議論になってしまう。冷静になって待つ必要があった。

何日か後になって 電話がつながった。近所の方々に相当御世話になっている様子だった。母は自転車に乗れないし、もちろん運転も出来ない。病院は西条町(現在の東広島市の中心部)のはずれにあって、実家から30キロ離れており、バスを使うと往復5時間はかかる。

宏は一晩考え、翌朝5時前に起き上った。「今日の結婚式への参列は取り止めて、田舎に帰るよ。病院の送り迎えだけでも助かるはずだ」 「それなら私が帰る!」 「・・?、そうしてくれるか。すまん。」

話はすぐにまとまり、妻が支度を始めた。この夫婦の行動力には目を見張るものがある。30分後には妻は電車に乗り、広島に向かっていた。昼頃には広島駅から「これから田舎に向かう」という電話が入った。その連絡を受けた後、おもむろに、宏は部下の結婚式へと(何事もなかったかのような顔で)出かけて行った。

妻は田舎で大活躍 をしたらしい。一週間後、「今夜12時頃、駅まで迎えに来て!」という電話が入った。その日は「体育の日」であった。妻の帰りを待っていると、突然、マンションの階段を駆け上る足音がしてきた。妻であった。

「ただいま」 「どうしたんだ。電話をかければ迎えに行ったのに」 「電話をかけてる暇がなかった。タクシーで帰って来た」 手荷物の紙袋などが破れており、服も乱れ気味であって、一種異様な雰囲気が漂っている。妻は興奮気味に話し始める。

ちょっとちょっと、事故に遭ったの。正面衝突で、相手の運転手は血だらけになってたの」 「どこで事故を見たんだ?」 「田舎でよ。乗ってたのよ、そのバスに」 「なに、バスが正面衝突? それで、怪我はなかったのか」 「私は運転席のすぐ後ろに座っていて、前を見ていたのよ。ちょっと眠かったけど、薄目を開けて前を見ていたら、向こうから来た乗用車が急にバスの前方に曲がって 飛び出して来たの。

『 危ない。ぶつかる!』と思った瞬間に手すりを握ったの。"無傷"だったのは私だけで、隣の男の子は頭を抱えて「痛い。痛い。」て、泣いていた。後ろの方に座っていたおばあさんは、通路に転がって倒れていた。」 「それでどうなったんだ」

乗用車はぐちゃぐちゃに壊れてた。バスの運転手もちょっとの間動かなくなってたので、窓を開けて叫んだの。『済みませ~ん。助けて下さ~い。警察に電話して下さ~い。救急車呼んで下さ~い。』

「でも冷たいもので、なかなか止まってくれないのよ。坂を登ってくる対向車線の車が数台通り過ぎて行ったわ。薄情なものだわ。下りの車はバスが進路を塞いでるからスピードを緩めて追い越そうとするでしょ。その中の一台の赤い車がやっと止まってくれたの。」(窓を開けて顔を出してくれたらしい)。

「『 警察に電話して下さい。救急車を呼んで下さい。』と叫んだら、頭を大きく縦に振ってくれたの」 「それで救急車は来たのか?」 「分からない。私、"非常口"から出たのよ。運転手が気が付いて、大丈夫ですかって話しかけて来たの。『今、警察を呼んでもらうように頼んだから、救急車も来る。』と、言ったの」

「久美子、おまえは本当に大丈夫だったのか」 「ちょっと腕を打ったみたいだけど、大丈夫だった。他の乗客は6人いたけど、みんな痛がっていた。運転手と一緒に、倒れている人を起こしてあげたりしたけど、気が気じゃなかった。だって、東京に帰る新幹線に間に合わなくなるでしょ。

運転手は、『あんたには居て欲しいんじゃがのー』と言ってて、悪いとは思ったんだけど、『東京に帰らなければならないので、ごめんなさい。豊栄の大山と申します。私、見てましたから、何か必要でしたら、明らかに向こうが悪いと証言してあげます。電話して下さい。』と言ってあげたの」 「それで?」

「バスのドアが開かないのよ。それで運転手が"非常口"を開けてくれて、そこから出たの。(衝撃のため)バスも路肩に寄っていて、谷底に落ちそうだった。落ちてたら私も、無事じゃあ済まなかったと思う。」

「久美子は本当に何ともなかったのか?」 「大丈夫よ。この通りピンピンしてる。」 妻が飛び跳ねてみせる。 「3日ぐらい経ってから痛くなることだってあるから、気を付けてなさいよ。それにしても不思議だねえ、一人だけ無傷だなんて

「この子はまだ生かして置いて、親の面倒を見させなければならないから、今死なせる訳にはいかない、と、神様が思われたのよ、きっと!」 「そうだろう。そうだろう。無事で良かった」 「アッ、そうだ。お母さんに電話しとかなきゃあ。」

谷底に向かって開いた非常口から出た妻は、バスにしがみつくようにして回り込み、アスファルト道路に出た。乗用車の運転手も気になるので、前に回って見た。目を覆うようなつぶれ方で、若いドライバーの鼻からは血が流れ出し、目は開いたままだった。首の辺りの血管がピクピクと動いていたので、まだ息があるらしい。

エンジンから煙が上がり、油も道路に流れ出ていた。バスの運転手も非常口から出て来て、車に火が着かないようにと、ブルンブルンと動いているエンジンを切ろうとした。が、どうしようもなかった。幸い雨が降っていて、煙は段々と治まっては来ていた。

何時までも見ている訳にはいかなかった。事故現場の横を何台もの車がすり抜けていった。『済みませ~ん。止まって下さい』と叫んでいる女性を避けるようにして通り過ぎるとは、何とも薄情な世の中だ。

濃い緑色の車が止まってくれた!「済みません。どうしても新幹線に乗らなくてはいけないのですが、乗せて下さい」 「どこまで?」 「西条駅までお願いします」 「そっち方向には行かないんだが、。そこから先、どこまで行くんだ?」 「広島駅から新幹線で東京に帰ります」 「ちょうどいい。広島駅まで送ってあげよう。乗りなさい」。

45歳くらいのおじさんだった。白竜子カンツリークラブ(ゴルフ)からの帰りだった。久美子は名前を聞いたが、教えてはくれない。「 困っている時はお互い様です。」 有難いと感謝したが、それでも何か、お礼がしたかった。

田舎から沢山の"おみやげ"を貰ってきていた。事故の時に紙袋も破れ、柿や栗なども散乱し大半は失っていたが、幸い手元に"栗が一包み"が残ってる。それを差し上げて、新幹線改札口の方に駆けて行った。

『救急車が来たかどうか?』心配であった。名前と電話番号を運転手に教えてあった。『突然、警察から(田舎の母に)電話が入って、仰天されても困る。』 広島駅まで送ってもらったお陰で、少しユトリの出来た妻は、電話してみた。

「あなたは無事だったの?どこも怪我してないの?」 「私は大丈夫。不死身だから」 「今は大丈夫と思っていても、後で後遺症が出て来ることもあるのよ。・・・」 「それじゃ、東京に着いたら、もう一度電話します。」

自宅に着いてから、突然思い出したように掛けた電話が、それであった。

後日談では、若い運転手は亡くなったとのこと。19才の若さだった。バスの運転手も入院したとの事。 地方の出来事で、中国新聞にその事故の記事は載ったそうである。 但しその記事には「乗客が6人」となっており、全員重軽傷を負って、運転手と一緒に入院したと出ていたそうで、一人、現場から消えた女性 がいたことには触れられていない。

2日後に田舎から電話がかかってきた。「もし後遺症が出て来た時に、乗客リストに記入されていないと困るので、私が電話を掛けといてあげる。」 宏の母の言葉である。その後、宏の母は俄然元気が出て来たようで、あちこちに電話を掛けまくって、妻を乗せて広島駅まで送ってくれた"親切なおじさん"を突き止めるところまでやった模様であった。

この事件のお陰で肝心の父の陰(話題)が薄くなったが、歩けるまでに回復した。74歳。まだ、お腹には"膿み出し用の管"が取り付けてあり、体力が回復したところで、「本格的な手術」だそうだ。

その時は、妻も手伝いに帰るし、宏も帰ることになるであろう。 まだまだバタバタした日が当分の間、続きそうだ。

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2009年6月 2日 (火)

33)、スペイン(バルセロナ)からの便り

便りがないのは元気な証拠だ。ハガキは1週間はかかる。そろそろ来るんじゃあないか」と言ってた宏も、いささか心配になってきた。
「あれだから、電話をかけるだの、ハガキをすぐ送るだの言わなければいいのに。・・」
ひょっとして何かあったんだろうか?
 帰国する頃になっても連絡が入らなければ、探しに出かけることになるかもしれない。

 出発から10日後になって初めて電話がかかってきた。
妻が嬉しそうな声でしゃべりだすと同時に、小言も言っている。
「何をしてたの。こっちは心配してるんだから。」
「・・・」
「それでどうしたの」
「・・・」
「そう」
「・・・」
「ふーん」
「・・・」
「それで?」・・・と、何を話しているのか皆目見当が付かないが、安心した。
後で、『 電話の掛け方が分からなかった 』らしいと聞いて、納得できた。
東京のように電話ボックスの多い都市は、ヨーロッパでは稀。
唯一イタリアの観光の島カプリでだけ新品の電話ボックスが目に付いた。(携帯電話が発達した現在では、それもどうなっていることやら?)
 数日後に、マドリッド消印の絵ハガキが届いた。

『(-7.9.94消印) お父さん、お母さん、由美ちゃん(次女)へ 電話しなくてごめんなさい。(これが着くころにはまだ電話してないかな)。初日から、いきなり回りまくってしまった。といっても、空港で知り合いになった Hong Kong(ホンコン)の男の子二人と、とても馬があって、一緒に回ったんだ。彼ら、仲々行動力があって、面白い。
『もちろん会話は英語です。彼らについて行ったお陰で 9/3 は宿がYouth!(ユースホステル) 650円で朝ご飯まで付いてきた。そして、9/4 は Toledo(トレド)という小さな町に来て、4000円のホテルにいます。今日も色んな所に行ったんだけど、ちょうど道を聞いた(私がよ)女の子と、英語+スペイン語混じりの会話で、一緒にごはんを食べたりと、仲々Good!
『だって彼女は Barcelona(バルセロナ出身で、おいしくて安い食べ方を知ってるんだもん。明日も一緒に行こう!と、2人で言ってます。なんか、一人で旅行しているという感じではないです。では、ⅰAdios ! (アディオス:さようなら)』
 
( 父親ゆずりの汚い字だ。)
 その一枚のハガキを、宏も妻も、何度も何度も(穴が開くほど)読み返した( 親というものはそんなものだ )。
 電話で妻が叱ったのが利けたのか、ハガキはそれから3通届き、電話も数回かかってきた。宏と較べ、はるかに"こまめ"である。後で聞くと、田舎にも親戚にも絵ハガキを出したそうだ。

『(12,9,94 消印) 元気ですか?私はとても元気です。でも、Maria(マリア)と一緒にいた時が Peak (最高)に面白過ぎたので、なんだか一人でさびしいって感じ。でも旅行者の人や、Bar (バー:安い食べ物屋)で、ちょっとした会話は出来るようになった。
 昨日は Segovia (セゴヴィア)という所にいて、今日は Cordoba(コルドバ)にいます。Segovia では昔の水道橋が見れてよかった。本当にこれはスゴーイ!! Cordoba にはスペイン風新幹線で(しかし、とても遅い)今日来たばかりで、明日もここに居るつもりです。今は外の食べ物屋で一杯やっている所なのさ!!ではまた。ⅰHadios ! 』

 電話が入り、絵ハガキが届けば一応は安心するものの、待つ身にはつらいものがある。宏はついこの間まで待たせていた立場であって、事情も手に取るように分かるのだが、帰って来る娘の顔を見るまでは、落ち着かない毎日だった。
宏でさえもそうなのだから、妻や田舎の祖父母の心配は察しが付くというもの。
『 あのような冒険は、あれが最後かな?』
 娘の身の安全を心配しつつも、時にこっそりと、ニヤ付いていた。
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 出発から3週間と2日後、
無事、娘が帰って来た。
その夜宏は、遅くまで娘の話に付き合っていた。色んな方にお世話になったようである。
目的が宏のものとは当然違うし、女性と男性の差もある。
娘の経験してきたものの多くは、宏のものとは大きく異なっていた。
 またどこかに冒険旅行をしたくなる気持ちを抑えるのに、心の奥で苦労していた。

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32)、広島の田舎から羽田へ 今度は娘がスペイン一人旅

親孝行にはなった。』と思っている。但し、今回の帰省では父親の相手は、あまり出来なかった。相当弱っているようにも見受けられた。
ある日父は思い出したかのように、奥の方から土地の権利書や刀剣類の届出書類を取り出して来て「急な時に宏が困ってはいけないから」と言いつつ、説明してくれた。更に、実際の刀剣類の手入れ方法までやって見せてくれた。
 日本男児、父親のすることを興味深く見守ってはいたが、何かさみしい物を宏は感じ取っていた。

 今は次女を連れて、帰りの飛行機の中である。
「乗客の皆様、機長です。左手方向に富士山が見えます。ただ今、静岡県上空を飛んでおります。・・、」 丸顔の優しいスチュアーデスが手招きして、
『窓から見てごらんなさい』とジェスチャーしている。

 娘と一緒に、そのスチュアーデスの居る窓まで近付いて行き、覗き込んで見た。
記録的に雨の降らない空夏だった。雲もほとんど無く、海岸線がクッキリと見える。
ローマブ~リュッセル間で見た海岸線ほどではなかったが、それなりに美しい。
その海岸の向こうに小さな富士山が見えた。
少しだけ雲のかさをかぶっている箱庭の情景であった。
 その箱庭は静かにゆっくりと、時計回りに回転していった。 まもなく羽田である。

長女がスペイン旅行に出発

 2日遅れで 長女が広島から帰って来た。9月にスペインに行くための資金造りであろう、それから毎日、アルバイトに余念がない。
田舎でも「やめておきなさい、娘一人でなんて」と、相当言われたらしい。
妻も大反対である。しかし宏は、一人静かに応援している。
心配ではあるが、反対出来る訳はない。
『蛙の子は蛙だ。アメリカに1年間行ってて上手くやってきたんだ。やれる自信があるのだろう。なんとかするだろう。』 宏はそう思って見ている。

「お父さん、ユースの会員にはなって行った方がいい?」
「その方がいいよ。安いだけが取り柄だけどね」
「私はあまり利用しないつもりだけど、分かった。どこに行ったらいいの?」
「地球の歩き方にでも書いてあるだろ」
・・・「スペイン観光局には行ったのか?」
「何、それ。領事館にあるの?それとも大使館?」
「旅行者のために、各国が日本に開いている旅行案内所だ。青山辺りにあるはずだよ」
 「ありがと!」

 高校生・大学生ともなると、親父はけむたがられて話かけてもくれないんだそうだが、その点では宏の家庭は一風変わっている。宏が親らしくないのかも知れない。
「お父さんはすごいよ。若者が自転車旅行するくらいは珍しくないけど、その歳でねえ。感心。感心。」
誉められているのか、からかわれているのか、まるでお兄さん扱いだ。
母親に対しても同じで、こちらはお姉さん扱い。
一緒に歩いていると、友達から「あなた、この間、あそこを二人で歩いてたでしょう。あれ、従姉妹? お姉さん?」 若く見られるのだから妻は結構喜んでいる。
しかし、父親は兄さん扱いで喜んでいいものかどうか、少々複雑な気持ちだ。

「そろそろ荷物を準備しておいた方がいいんじゃないか?」
「そうしよッか。あのリュック何処にある?」
「えーと確かここにしまって置いたはずだが、、久美子(妻)!俺のリュックは何処だ?」 押入れの中を、家族総出で引っかき回している。

翌々日の朝、5時前に台所でゴトゴトと音がし始めた。妻が長女の朝食の準備を始めたのであろう。昨夜は最後の手伝いをしてやり、早めに床に就いていた。
 まだ出発には時間がある。少しウトウトした。

 急に玄関口で、げた箱を開ける音がする。あわててパジャマ姿で見送った。
クタクタのジーパンに安っぽいヨレヨレの服を羽織り、宏のリュックを背にしている。
そこにふっくらとした丸顔がなければ、勇ましい男の子の"いでたち"と見紛う。
「気をつけて行きなさい」
「アディオス(じゃあまたね)」

 その後で次女が起きて来て、泣きべそをかいている。
何か渡す物があったらしい。
「あれほど頼んでいたのに、母さんどうして起こしてくれなかったの」
「もう渡したと思ってたわよ。よく寝てたから、起しちゃ悪いと思ったわよ」
 妻と次女との口げんかが、しばらく続いていた。

 出発以降の家族の会話 は長女の話ばかりだ。
「無事に飛行機に乗れたかしら」
「まだ成田だろう。そろそろ搭乗かな」
・・・
「今、どの辺りを飛んでるかしら」
「そうだな、マレーシア辺りじゃないかな。そこで乗り換えるんだろう」
 ・・・
 宏と違い、長女には時間がある。あちらこちらに連絡を取っていたが、一番安い南回りの格安航空券を手に入れた模様だ。
「お父さんはいくらだった?」
「14万と3千円」
「ふふふ、勝ったね。私は9万と5千円」
「南回りだと時間がかかるだろう。乗り換えもあるし、父さんは自転車が行方不明になっちゃ困るんでね。」
「そうだったんだ~。マレーシアで行きは4時間、帰りは16時間も待ち合せ時間があるんだ。降りようか」
「16時間もあれば、クアラルンプールで市内観光が出来るだろうね。だけど空港を出たら1万円余分にかかるんじゃないのか」
「え~、そうなの?」
「父さんの場合はそうだった。よく調べといた方がいいよ」
「わかった」 ・・・

 「向こうに着いたらすぐ電話かけるからね。父さんはハガキ一枚しか送って来なかったけど、私は出すからね。安心して待っててね。」
 そう宣言して出て行けば、期待して待つのが人情だ。
しかし待てど暮らせど、着いたという電話がかかってこない。
5日経っても、1週間経っても、電話どころか絵ハガキ さえも届かない。

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