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2009年11月14日 (土)

ナポリ・サンエルモ城・卵城・サンタルチア

 宏の両親は十数年前にヨーロッパ旅行ツアーを楽しんで来ている。その母が久々に田舎に帰って来た宏に話しかける。
「宏ちゃんが送ってくれた日記は面白くて、3回も読み返したよ。最初はざっと、その次はじっくりと読んでみた。3回目はお父さんが地図を出して来てくれたので、二人で地名を探しながら、ここかな?あっちかな?と、確かめながら読んだわよ。」
「3回も読み返してくれたの?そりゃあどうも有難う。疲れたでしょう」
「下手な小説よりもはるかに面白かったわよ。自分の息子が行って来たということもあるし、私らもヨーロッパ旅行をして来ているでしょ。特にスイスの山越えをしていく辺りの情景は良く分かる。私らは登山電車だったけど、本当に山肌にへばり付くようにして登って行くんだよね。もし元気だったら、もう一度、行ってみたいけど、もう駄目だよね」
「そんなことないよ。電動の車椅子でも買って、遊び回ればいいじゃないの」
「・・、ところでローマやナポリにもいったんでしょう、私らもいったけど」
「うん、行ったよ」
「旅日記では省略してあったけど、その時の話をしなさいよ。ピサ駅前から夜行列車に乗ったんでしょ。あれからどうなったの?」
「あれから夜行列車に乗り込んだんだけど、特急寝台列車なので、自転車を置く場所がないんだ。切符を買う時に自転車を持ち上げて「これを持ち込むよ」と言ったんだけど、駅員がひどく怒った顔をして、何やら喋ったんだ。・・、」

 何となく駅員が、「それをおれたちに運んでくれというのか。自分で運べ!」と言ったように思った。

 切符はくれたし、別料金の請求もされなかったので、それ以上にこだわるのは止めた。
その寝台列車は、ひとつのボックスに3人並んで眠れるようになっていた。
他の二人が気軽に許してくれたので、自分の足元に自転車を置いて眠ったが、ちょっと窮屈ではあった。
 4時間ぐらいは寝たのだろうか、明るくなって目が覚めた。

 特急列車は停まる駅も少なく、猛烈な勢いで朝もやの中を飛ばしている。
通路に自転車を出してタバコをふかしていると、たまに人が通る。
その度に自転車を片寄せながら、申し訳なさそうな顔をふるまっておいた。
朝の6時過ぎに、その列車はナポリ駅に到着した。天気の良い日であった。
自転車をバックから取り出して組み立ててはみたものの、「さて、これからどうしたものか」と思案顔。予定がないのであった。
 ナポリ中央駅前は非常に長く広がっており、まだ、眠りの中にあった。
『とりあえず朝食だ。それから海岸に出てのんびりしよう。』
 ゆっくりと動き出した。

 カプアナ門の近くで、コーヒーとパンを腹に収めた。
段々と人や車の往来が激しくなってくる。
そのデコボコした石畳の道を、南西へと進む。
ニコラアモーレ広場、ボヴィオ広場を経由し、ヌォーヴォ城、サンカルロ歌劇場前を通って、王宮前に達した。
 王宮前広場付近は大改修工事の最中で、動くこともままならない様子だった。
「ナポリの交通渋滞は半端じゃない」と聞いてはいたが、東京の比ではない。
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小高い丘の上にあるサンエルモ城
は、王宮前広場からもよく見える。
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 海岸に出た。歌で有名な、サンタルチア港である。その小さな港の向こうに卵城(Castel dell’Ovo)が、朝日をいっぱいに浴びながら、どっしりと構えている。海に突き出た城であり、懐かしいサンタルチア港を懐に抱え込んでいた。

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 城の門は衛兵で固められていた。 穏やかな朝だった。卵城に渡る橋の近くで、父と子が素潜りで貝を取っていた。宏はしばらくの間、その風景をただボーっと眺めていた。 地元の老人が、「その貝を売ってくれ。いくらだ?」と交渉しており、見ていて面白い。

 その老人が宏を手招きする。ついて行くことにした。
卵城には入らず、その横にある路地裏に、どんどん導かれて行く。
夕方には賑わうであろうその路地裏も、今は朝の準備中で、自転車を押す東洋人の男(宏)と、地元の御老人との散歩は人目に付いた。(奇異な目で見られて少し恥ずかしかった)。

 そんなことにはお構いなしで、老人は手招きを繰り返したり腕を引っ張ったりしながら、宏を連れ歩く。レストランの中庭や堤防伝いにも歩かされた。
イタリア語なのでよくは分からないのだが、何となく、
「ここで自分の息子が働いている」だとか、
「娘が勤めている店」だと喋っているのように思えて、適当に相槌(あいづち)を打ちながら付いて歩く。
 ヨットがたくさん停泊するサンタルチアは、小さな港ではあったが、歌にあるそのもので、明るく眩しかった。

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コメント

旅している内に、イタリア語でも何となく分かるようになるものなのですか?面白いですね。

投稿: aki | 2011年9月17日 (土) 14時29分

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