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2009年11月 5日 (木)

境界層内の無流層の存在&高速の粘性流体計算法(まず絵図を繰って見て!)

1、はじめに
 自然対流と呼ばれる流れがある。小さくは電球熱源を内部に持つ灯具や、更に小さくはフィラメント熱源を内部に持つ電球内部の封入気体移動、逆に大きくは気象現象などもマクロ視点からは自然対流である。
 プランドル等によって流れ現象中の個体壁近傍に境界層が存在し、重要な意味を持っている事が明らかにされて来た。境界層は「物体から充分離れた流れ速度を基準にして、その99%速度限界内領域を言う」と定義されている。この定義からすると、自然対流は系全体が境界層内に埋没した現象 と言え、観測空間全体が境界層内現象 と言える。

 この論文ではまずローカル座標系について議論した後、境界層内現象の新しい捕え方を提案する。更には、例えばファン・クーリング・システムのような、強制対流現象を想定しつつ、薄い境界層を持つ強制対流問題に関しても、新しい提案が応用される可能性を示唆したい。論文全体を通して、熱流体に於ける熱伝達係数問題の解決の糸口を与える議論としたい。

2、ローカル座標系・絶対座標系・相対座標系
 流体の運動を計算する場合、絶対座標系と相対座標系とが一般的に使用される。絶対座標系は系を外から見た座標系であり、観測物体(例えば野球ボール)が画面上を動く系である。これに対し相対座標系は、観測物体と共に移動する座標系であり、野球ボールの中心位置は画面上で静止し、回りの空気のみが移動して見える座標系である。
 この章では、以下の章でたびたび用いるローカル座標系について、まず説明する。

2.1、慣性力が無視し得るローカル座標系の設定
 観測対象空間を小さな要素升に分割し、個々の要素升内に存在する物質の運動を考える。経過時間も微小分割し、分割された微小時間を⊿t、⊿t内でのある分割要素升内の物質平均密度をρi、平均速度をVi とする。
更に、ある要素とその近傍だけに着目して、その平均移動ベクトルをV0とする。
 ローカル座標系は、微小時間⊿t内で、このV0とともに平行移動を意味する事としたい。
空間構成要素がN個あれば、N個分のローカル座標が想定される。

 この論文で述べるCURL手法に於いては、⊿t秒毎に各要素近傍毎のローカル座標での計算と絶対座標での計算とを、交互に行う。即ち、各⊿t秒間内でV0とともに移動するローカル座標系で計算し、⊿t秒経過直後に絶対座標系に戻す変換を実質的に繰り返すことになる。
このように設定すると、完成力のほとんどは絶対座標系の中だけで考慮すれば良くなり、各ローカル座標系の中では、粘性力に較べ慣性力は無視し得る存在となる。

 乱流現象もこの観点で見ると、「ある要素とその近傍で構成されるローカル座標系が要素の数分だけ有って、流体各部の入れ替わり現象の結果が総合され、結合された流れ」として捕える事が出来る。
ちなみにボールと共に移動する相対座標は、ここでいうローカル座標がただ一つだけ有って、その大きさが系全体に広げられ、かつ経過時間全体に適用されたものと言うことが出来る。
 ベクトル計算の視点で説明し直せば、
絶対座標系での平均移動ベクトル分布(V0群)を計算し、その分布とローカル座標での速度ベクトル分布との合成ベクトル分布として、流れ現象を計算して行く事になる。
各種の連続の法則に矛盾しないように、各ローカル座標同士の”繋ぎ(つなぎ)”を⊿t秒経過毎に行って置けばよい。
 以下、度々、”ローカル座標”という言葉を使うが、上記の如く、”部分的な座標”という意味で使用しており、それが各場所毎に沢山あるのだと、御想像願いたい。

2.2、浮力はローカル座標において合理的に記述出来る。
 浮力によって起こる動きは、その要素近傍での入れ替わり現象である。その数多くのローカルな入れ替わり現象が、個体物質分布や流体の温度分布など、時と場合によって連続の法則に矛盾しないように組合わされ総合され、目に見える形の流れに表現されたものが流線(正確には道筋:Path Line)である。

 先ほど述べたように個々のローカル座標系内では慣性力が無視し得るので、このローカル座標系内に於いての流れは、”粘性力”が支配的である。ローカルにはその要素近傍のみの物性値と浮力によって物質移動が決定される流れであり、”完全粘性流体流れ”と呼べるであろう。それ故、⊿t秒内での個々のローカル座標系内に於いては、”ナビエ・ストークスの方程式”から慣性項を取り除く計算が可能となる。
 ローカル座標は、境界層理論でいうところの境界層内現象を分析するのに好都合な座標系である。

3、CURLの定義とシミュレーション計算例
3.1、CURL、DCURLの提案

(1) CURLの定義
Curl
 図1は4つの微小要素が隣り合っているところを示しており、浮力によって対流が起こる最小モデルである。4つの浮力(F1,F2,F3,F4)により、中央に回転力(:モーメント=力x距離)が働く。その回転力Cは反時計回りを正として、
 C≡(F1-F2-F3+F4)*L^3   ・・・(1)
        L^3:微小要素体積
これをCURLの定義とする。
浮力(Fi)は単位体積当たりの力とする。

Dcurl
 (2) DCURLの定義
 図2は6つの微小要素が隣り合って浮力が働いている状態を示している。隣り合う流体の移動量として、CURLの差分を用いたい。移動量は、[1] 時間⊿tに比例し、[2] CURL差分(C2-C1)に比例し、[3] 粘性係数μに逆比例するとする。比例定数とAとして、
DCURL≡A*(C2-C1)*⊿t/μ
  C2=(F23-F13-F12+F22)*L^3
  C1=(F22-F12-F11+F21)*L^3
∴ DCURL≡
A*{F23-F13+F11-F21}*L^3*⊿t/μ・・・(2)

 この(2)式は次の事を意味する。
・ C1とC2とで挟まれる部分の流体移動量(DCURL)には、F23,F13,F11,F21のみで、前後左右上下に隣接する要素範囲を越える部分に関しては(このDCURL部分には)影響を及ぼさない過程が設定されている。
・ (2)式の{ }内を整理すると、{F23-F13+F11-F21}={(F23+F11)-(F13+F21) }
Decleaseinclease_2  (F23+F11)がDCURLを加速し、
 (F13+F21)がDCURLを減速し、
その差がDCURL(空気移動量)に比例すると仮定された事になっている。

3.2 シミュレーション計算例
 具体的な実行例から説明しましょう。
次の図4、図5は、縦横高さが各々100mmの灯具と空中に浮かして設置し、灯具内中央に、24mm角の熱源を設置したモデル計算結果を示しています。
Photo
 熱源は電球を想定し、中央にフィラメント公言を配置し、24mm角の電球ガラス表面温度を図5の如く上面185℃、側面140℃、底面118℃と与えてあります。
Photo_2
灯具壁の厚さは2mmの設定です。周囲の環境温度(空気の温度)は28℃であり、灯具の周囲でも対流や伝導が起こっている。なお、全空間を12mm毎に区切り、要素数は約700個、処理時間は当時のコンピュータ(IBM4381-P02)で、約2分であった。(現在のコンピュータならば、”一瞬”の内に結果がグラフィック表示されます)。

 図4は安定状態に達した灯具流れの計算結果であり、各要素間の空気移動量(DCURL)から逆算された流線分布を示しています。
《非常に粗いモデルであるにもかかわらず、対流現象を上手に捕えているのが分かります。》
特に、熱源を囲むように流れる対流現象、熱源直上の流線が絞り込まれつつ上方に空気移動している現象、流線の密集度などが、注目に値します。

 図5はその温度分布ですが、これについてもモデルが簡単な割には随分ともっともらしい温度分布が得られています。等温線は各要素平均温度計算結果である立方体の中央の数値を元に作成してあります。なお、図4、図5は断面図ですが、計算は3次元計算がおこなわれており、任意の断面の分布も計算されているので、近年の3Dグラフィックス表示も一瞬の内に表示出来ます。
Photo_3
図6は、計算された灯具の温度分布を曲線で表し、実測温度と比較したものです。《実測結果に酷似した分布が得られています。》

 一般的に言って、熱の伝わり方には3タイプがあります。放射・対流・伝導の3つです。
シミュレーション計算時の条件設定において、もしこの3つのバランスが上手く取られていなくて、実世界に合っていなければ、計算結果は実測分布とかけ離れたものとなります。
電球の放射には指向性が存在しており、電球を90°回転させると、放射の影響が温度に現れて来ます。図6では、左側の(A)がフィラメントを水平にセッティングした場合であり、右側の(B)があ垂直にセッティングした場合です。
Photo_4

 図7は、図6の100x100x100の灯具の代わりに、100φx100の円筒灯具を設定し、実験とシミュレーション結果とを比較した図です。
  左半分はフィラメントコイルを横置きとした場合、右半分は縦置きとした場合の結果です。図6、図7の左右のグラフを比較することにより、放射・対流・伝導の強度バランスがほど良く設定されているのがご理解頂けると思います。

 4、ハーゲン・ポアゾイユの法則との関連
 粘性係数の測定に用いられるハーゲン・ポアゾイユの法則を用いてCURLとの対応関係を調べてみましょう。まずハーゲン・ポアゾイユの法則について概要を説明し、次にこの法則から求まるローカル座標での空気移動量式が、CURLから求まる式と”同じ形”になる事を示していきます。

4.1 ハーゲン・ポアゾイユの法則とは、
 細い管を通して一定時間内に流れる流体の量は管の両端の圧力差に比例し、管の半径の4乗に比例し、管の長さに逆比例するという法則です。(G.Hagen,1839;J.Poiseuille,1840)
式で書くと次のようになります。
 V=(π/8)・(r^4・⊿P・⊿t)/(μ・h) ・・・(4)
ここで、V:一定時間(⊿t Sec)内に流れる量(CC)、r:管の半径(㎝)、h:管の長さ(㎝)、⊿P:圧力差(dyne/C㎡)、μ:粘性係数(gm・㎝^-1・sec^-1)
 この式は実験と非常に良く合い、粘性係数μの計測手段としても常用されるという有名な法則です。

4.2 慣性力が働かないローカル座標系での流体移動量
 ハーゲン・ポアゾイユの法則を使用して、第3章にて検討したローカル座標系での流体移動量がどう表現できるか検討してみましょう。
第3章で用いた図3の中から、(F23+F11)のみ取り出し、図8のように表現してみる。
Photo
そうすると、煙突のようなパイプが形成されている事が分かる。
(F13+F21)に関しても同様の煙突が考えられるので、先ほどの図3は、その2つの流れがぶつかり合い、”力の大きい方に境界面が移動している”と考えて差し支えないであろう。更に、図9の様にパイプの中を細分化すれば、どの流路も同じ長さを持つ事が分かる。

 図10のような真っ直ぐなパイプと、図9のパイプは、流線に沿って細分化した流路超は同じである。今議論しているローカル座標内に於いては流体の慣性力は無視出来るので、粘性に「よる抵抗は、曲がったパイプでも真っ直ぐなパイプでも同じと見なせます。(注意:慣性力無視の意味は第2章でも予め述べましたが、分かりにくい処なの第6章にて再度議論を行う。此処はパイプが曲がっていても、真直ぐでも流管抵抗は同じと仮定して説明の筋を追ってほしい。)
 パイプの長さは、πL/2、便宜上、断面積はL^2=πr^2としてポアゾイユの法則を適用すると、⊿t秒間の空気移動量V1は
V1≒(π/8)・(r^4・⊿P・⊿t)/(μ・h)
=(π/8)・(L^4/π^2・⊿P・⊿t)/(μ・πL/2) ・・・(4)
浮力Fijは単位体積当たりの圧力なので、大気圧をP0とすると、圧力差⊿Pは、
⊿P=-(P0-F23)+(P0+F11)=F23+F11
と表せます。結局、
V1≒{1/(4π^2)}・L^3・{F23+F11}・⊿t/μ  ・・・(5)
同様に(F13+F21)に関して
V2≒{1/(4π^2)}・L^3・{F13+F21}・⊿t/μ  ・・・(6)
よって左右方向の空気移動量DCURLは
DCURL=V1-V2
≒{1/(4π^2)}・L^3・{F23+F11-F13-F21}・⊿t/μ・・(7)
が得られる。

4.3 CURL式とポアゾイユ式との対応
前節の(7)式と第3章のCURLの定義より導かれた(3)式とを並べて示す。
(7)⇒DCURL≒{1/(4π^2)}・L^3・{F23+F11-F13-F21}・⊿t/μ
(3)⇒DCURL=   A   *[F23-F13+F11-F21]・L^3・⊿t/μ
両者を見比べると、式の形は全く一緒であり、(3)式の比例定数Aが
  A≒ 1/(4π^2) ・・・(8)
であることが分かる。
 後の議論の関係上、浮力を気体の絶対温度で表しておく。
 Fij=(Tij/T0-1)・ρ・g ・・(9)
動粘性係数νは、ν=μ/ρなので、DCURLは温度の関数として次のように表せる。
DCURL(T)={1/(4π^2)}・L^3・
        {T23+T11-T13-T21}/T0・g・⊿t/ν・・(10)
ポアゾイユの法則とCURLとは密接な関係にあり、比例定数Aを適度に調整する事により、「CURL思想で計算する事=ポアゾイユの法則で流体計算する事」が示せた。
サフィックスを(i,j,k)と変え、ベクトル成分計算を行う事により、以上の議論は3次元空間でも成立する。

5 境界層問題と無流層の存在
 DCURL={1/(4π^2)}・L^3・
        {T23+T11-T13-T21}/T0・g・⊿t/ν
 この4章で導かれた空気移動量の計算式だが、{T23+T11-T13-T21}以外の項は、一般的に多くの場合、定数扱いが可能とされる変数である。CURL思想による空気移動量は、複雑な連立方程式を解く必要もなくCURL計算を繰り返し、その差分DCURLを計算していけば求まる事を説明して来た。
 上記の式ではCURL自体すらも計算式から消えてしまい、空気要素の温度の加減算を直接繰り返していけばよい事を示している。本当にCURL計算自体も不要なのであろうか?
 この章では、コンピュータ計算上設定されるモザイクモデルの、物質判断の考え方を検討しながら、境界層の中の問題がCURL思想の中でどう扱われているかを説明して行く。

5.1 モザイクモデルの物質判断とCURLの値
 結論を先に述べよう。
図1のCURL最小モデルで「4つの要素の内一つでも個体の所があれば、CURL=0[ゼロ]と置き、その場所では空気は入れ替わらない。」と規定する。
6要素モデル(2つのCURL)の図2を使って、この規定を付加的に説明する。
中段の1つでも(F12、F22の位置に相当する要素の内一つでも)固体ならば、2つのCURL(C1,C2)共に、ゼロとなる。また、左上隅のF13の所のみが固体ならば、C2がゼロとなりC1だけが残る。

 DCURLは[C2-C1]に比例すると定義してあるので、上式{  }内で消えていたT11、T22が、いきなりDCURLの式上に現れて来る事になる。これが{T23+T11-T13-T21}を直接計算してはいけない理由である。

 要素物質が何であるかを判断するためには、一般的に「物質分布を表すDIMENSIONメモリー」が設けられる。私は固体要素には負数を与えて置き、物質判断が短時間で行えるように計算プログラムを組んでいる。モデルがちょっと複雑になるだけで、分割要素数は1万個~100万個へと簡単に増えてしまい、物質判断計算と言えども馬鹿にならない計算時間が必要となるのを避けるためです。

 空気移動量計算の手順は概略以下のようになる。
1)、浮力分布[Fijk=Tijk/T0-1]を予め計算。
2)、縦・横・高さの3重の[Doループ]を組んで置き、
  片っ端からCURL[Cijk]を求め、CURL-DIMENSION-MEMORYに蓄えて行く。
3)、DCURLをCURLの差分として求めて行く。
4)、出て行った空気体積分の熱量を引き算し、入って来た空気の熱量を加えて、⊿t秒後の温度分布を計算していく。
  得られた温度分布を元に、1)~4)を繰り返す。

 連立一次方程式を解いていく従来の方法に較べ、この計算手順では驚くほど高速の流体計算が実現出来る。その理由は、式とロジックとが最高にSimpleであることに依っている。

5.2 無流層の存在
 電球内部のフィラメント近傍では、ラングミューアシースという実質上移動しない層(いわゆる無流層)が知られている。このラングミューアシースに相当するものが他の流体現象でも存在するという仮定が、このCURL思想内に取り込まれている。即ち、
「固体に流体が接している時、固体表面に実質上動かないと見なせる空気層が境界層内に発生する」という仮定である。これを無流層と呼ぶことにする。
強制対流下では境界層自体が薄いため、これまであまり問題とはされなかったが、自然対流下では観測したい系全体が所謂境界層内にあるため、この辺りの検討が重要な意味を持つ。

 CURL思想ではこの境界層問題が”設定モデルのち密さ・粗さ”と”数学上の理論の粗さ”とで精度を分担し、両者をバランスさせることによって、境界層問題の解決が計られていることを示したい。
*、図11は左上端の1ヶ所が固体の場合である。C11,C12,C22の3カ所のCURLは温度が一緒でない限りゼロではない有限の値をそれぞれに持つ。その結果温度分布状況によって、例えば→のような大きな流れが計算されることになる。
Photo_2
*、図12では、左端の2ヶ所が固体の場合である。CURLの定義からは、C11、C21間の空気部分にも流れは実質上起こらない事になる。

*、図13では、左上隅と右下隅の2ヶ所が固体の場合である。C11、C22の2ヵ所の回りでは流体移動が発生し得るが、流れは実質上分離したものとなる計算になる事を示している。

 このように見て行くと、CURL思想が境界層内の壁に近い部分での現象に対して、ある解決方法を提案してものであることが理解して頂けると思う。即ち、
Photo_3
CURL計算では、分割された最小要素の1辺長(L)の半分(L/2)がその現象での実質的な”流れが発生しない場所(無流層)”である、と決めている事になる。
 図14には、CURL思想での境界層概念について、特に壁付近の流速分布に関して、マンガ的に示してある。

5.3 対数則に於いても無流層がある。
Nonflowlayer
図15(A)は、近藤純正著「大気境界層の科学」P37より引用した、対数則に関する実測図である。横軸は風速を表し、縦軸に地表からの高さが対数にて取ってある。この対数グラフに観測値をプロットすると、ほとんど一直線上にデータは並ぶのである。この直線を下方に延長して、U=0となる高度が「Z0」であり、この「Z0」を空気力学的粗度高さ、または単に粗度という、と説明されている。

 3組の実測データは、水平方向に一様な平坦地という条件下での風速分布を表している。
この図で注目すべきは、U=0、Z0=1.2㎝ のポイントにて、3つの直線が集中(交差)している事である。
対数則を式で表すと、
 U = (U~/κ)*Ln(Z/Z0)  ・・・(8)
ここで、U~:摩擦速度(=√(τ/ρ)、κ:カルマン定数、
    Z0 :空気力学的粗度高さor粗度、
    Z :観測点高さ、U :観測点での速度
 この式を使って、(U~/κ)=1m/Sec、の場合に関して、速度Uを横軸にして書き直したものが、(B)である。この(B)と、図14とを対応させて見ると、「粗度の存在と無流層の存在とは本質的に同じ事を意味している」ことが分かる。

5.4 無流層であっても、壁面と平行な面内では流れが存在。
 図16には、X軸、Z軸に対し面直な2つの壁あ描かれている。
Curl
それぞれをX-Plane、Z-Plane とする。
 温度勾配が存在すると対流が発生するが、先ほどの議論からは壁に接する要素は無流層という事になる。(C2=0)。
 これは各々の面直方向に並ぶ要素間での議論であり、面と並行する要素並びに関しては(4つの面共に壁ではないので)CURLはゼロではないので、流体移動が起きる。(図16のC1、C3)。
Photo_4 この事は、図17(A)のような密閉容器に5x5程度の穴を開けたばあいには、ほとんど空気の出入りが発生しないのに対し、図17(B)のように、10x5の穴をあけると面積比よりは遥かに多くの空気の出入りが観測される経験と対応する。

 即ち、無流層とは面直方向に並ぶ要素間計算上の話であり、壁面と平行に並ぶ流体要素間では流体は動くのである。
なお、図18(A)は、対角状に配置された壁近辺に(計算上)発生する無流層が、ベクトル成分計算結果としては、斜め方向に現れる事を示している。
Photo_5
《 現実の物体形状をモザイク表現した場合に於いて、無流層は元の局面をオフセットした形で発生する事になる。》

6、議論
6,1 ステップ化が必要とされるモデリングと数学的正確さとのバランス

(1)、ナビエ・ストークス方程式に関して、
 ナビエ・ストークス方程式はあまりにも有名な方程式であり、色んな方面の流体現象の研究に使用されているが、非常に複雑な数値計算を必要としている。コンピュータ計算を行う場合に於いても、膨大な計算時間がかかることはともかくとして、境界条件や初期条件を再設定するだけで、数日の仕事になることは頻発する。
 その方程式は数学的には完全であるし性格ではあるのだが、実用上行い得る要素分割計算は要素がモザイク的にならざるを得ないこともあって、現実的には”モデリング精度と方程式精度とのアンバランス”を来たしていることが多々ある。

 ステップ化が適度に行われたモデリングの精度とバランスする形でCURL思想は理論自体がステップ化されており、実用上必要な精度内での、非常な高速計算を可能としている。初期条件設定が簡単という意味でも、検討に値するであろう。

(2) キャノピー層と無流層
 気象学では大気層内の地上に近い部分に、”キャノピー層”という薄い層えお仮定している。
Photo_6
キャノピー層とは、「ビルや林や木立ちなど地面に存在する障害物が存在する層」と説明されており、上空の風速・風向とは大きく異なる流速と持つ。極端な場合、上空の風とは逆向きに流れが観測される場合もしばしばである。
 大気層と地表面の凹凸を含む空間を「キャノピー層の平均厚さの2倍」で微小分割して、⊿t時間内での各要素のベクトル平均風速を vi とし、大気境界層より上空の風速を Vi とすると、|vi|<< |Vi|である。
 地形の影響を含めた大きな自然対流を検討対象としているのであるから、|vi |が非常に小さいこのキャノピー層を無流層として扱う仮定は、あながち不合理とは言えないと筆者は思うのである。

(3) ダランベールの背理からの脱却
 強制対流場に於いては、境界層は物体近傍の極薄い層である。プランドル等は、境界層近似を導入してナビエ・ストークス方程式を簡単化し、近代流体力学の道を拓いた。
現在、ナビエ・ストークス方程式を用いて、強制対流を扱おうという試みが各研究機関で盛んだが、特に熱伝達率の設定に於いて、使用上大きな障壁が存在する。極薄い層ではあるが、流れ現象で重要な境界層内の研究がもっと必要なのではなかろうか?
 筆者もナビエ・ストークス理論を覆す者ではないが、ダランベールの背理(D'Alambert's Paradox ; 渦は永遠に消えない)は越えるべきパラドックスと認識している。この論文んでのCURLの提案は、[連続流体の不確定性部分と、数値計算上避けられない”空間は有限数でしか分解できない”というジレンマ部分]を補う仮説として提案した。

6,2 ローカル座標での慣性項無視の意味
 第4章では、個々のローカル座標系内だけの議論に終始した。その中で慣性項は無視され、ハーゲン・ポアゾイユの法則を大きく捻じ曲げた管に適用した。ここでは第1章での結論「ローカル座標系では慣性項は無視出来る」を思い出しつつ補足説明を行っておく。
結論を先に述べる。
 左右の流れが入れ替わっても絶対座標系での平均速度V0には影響が出ない。ということである。

 計算中の要素個々のローカル三表系は絶対座標系から見ると、各々のローカル座標が持つ平均速度V0で移動しており、(分割された微小時間⊿t内では)系の重心がV0で等速運動している。この等速運動物体の塊(形が変形する流体)の中心付近で、右にある物体が点対称の位置関係に有った左の物体を入れ替わったとしても、平均速度V0には影響しないし、重心移動を加速する力も生まれない。回転加速度は起こり得るが、粘性力によって起きている回転加速度の方がはるかに大きいとので、打ち消されてしまう。粘性力による摩擦力や圧力が伝搬しあう部分的なバランス終始計算をCURL思想は支えていると言える。

6、3 CURLシミュレーションの応用と適用状の注意点
(1) 電球内部の自然対流例
 再度、小さな世界の議論を行いたい。
図20に、ある灯具内に電球をセットした場合のシミュレーション計算結果例を示してある。
Photo_7
・ 電球内部、灯具内、灯具外にて、対流現象が上手く捕えられている点。
・ ガラス球壁が灯具の壁での熱伝達現象が結果的に上手く表現出来ている点。
などに、注目して頂きたい。

(2) 断熱変化
 飛行機の翼などのシミュレーションでは、流体の圧縮性および断熱変化などを考慮する必要がある。翼で発生する衝撃波の内部では粘性発熱・熱伝導のような非可逆過程が起こっているが、全体として外部からの熱の出入りはない。この断熱変化はローカル座標内での扱いが非常に好都合なように思える。

(3) 境界条件としての温度設定
 CURL手法に於いては、移動熱量は、⊿t秒経過毎に温度伝達計算を通してこれだけの熱移動が起こっていたとの事後計算から得られる。
 一方、コンピュータシミュレーションでは、熱の入力形態が3つ存在する。一つは放射熱であり、もう一つは観察空間の境界条件や出口入口を通して出入りする熱であり、最後の一つは、温度境界条件として設定される熱源表面温度からの熱である。ともすると、放射熱を受けた形での温度境界条件(ある一定値が設定される)部分が熱源である事を忘れがちになるが、ダブルに熱を加えないような注意が必要であろう。

(4) CURLは下方にも熱を運ぶ
 熱伝導は等方性。放射も等方性。しかし、対流は上方に多く熱を運ぶが、周囲の物質分布状況如何で臨機応変に下方にも熱を運ぶ。しかも熱伝導に較べ、かなり高速に熱を運搬する事が出来る。流体現象の面白いところである。

6.4 各保存則に関して
(1) 連続の法則と運動量保存則
 CURLの定義内で保証されているので、改めての議論は省略する。
(2) 温度伝達率とエネルギー保存則に関連して
 断熱現象かor等圧現象かの違いは、熱伝導と要素升の大きさで決まって来る。⊿t時間内に於いては等圧現象として体積移動量計算を行い、⊿t秒経過毎に出入りの流量と要素体積の比からその要素の圧力を求める。温度も同じく⊿t秒経過毎に出入りの流量比率から求める。単純な四則演算を行うため、多少エネルギー保存則から⊿t秒経過毎にずれが生じる危険性はある。但しこの四則演算は、空気を完全気体としてボイル・シャルルの法則を適用しているのと同じであるので、その程度の精度は保証され得る。
 気象現象の場合は圧力変化や密度変化は無視出来ないが、通常実験室レベルの自然対流現象の多くは、密閉容器内現象でない限り、”観測時間を通して圧力一定”との仮定が成立する。CURL計算に於いては計算過程内で極自然に圧力変動計算が行われることになっている。

6.5 DCURLは計算上の方便。混合率or入れ替わり率の設定の可能性
 温度勾配や密度勾配がローカル計算範囲内にて一定とみなせるならば、DCURL=0の時、出入りする熱量は等しく[実質上空気移動による熱の出入り無し]と仮定してよい。
しかし、粘性が支配的でない(例えば気象現象解析のような)場合、隣り合う要素同士でDCURL=C2-C1 がゼロであっても流体の出入りは発生する。また、温度・密度など物性定数が実質上同じ(均質)ならば、たとえ入れ替わったとしても、温度分布の計算結果は同じになる。

 そうでない場合、⊿t時間内で温度や密度が平均化せず、一つの要素内に少し温度の高い部分、低い部分が存在し無視できないことがある。DCURLを系sんに用いれるのは、あくまで粘性力が支配的な自然現象の場合である。要素升の大きさが大きい場合(Re数が大きい場合)など、乱流シミュレーションに応用する場合は、DCURLではなく、CURLそのものに比例して流体の出入りが発生するとすべきであろう。
 入れ替わり率(CURL量を要素体積fr割り算したもの)を定義すべきかもしれない。乱流係数・拡散係数・温度伝達係数などと大きな関係を持つ指標となりえるであろう。
これに関する議論は別の機会に譲りたい。

7 終わりに
 コンピュータの発達していなかった時代、流体現象のどのファクターが無視し得るか?! どのファクターが観測領域を支配しているか?!の検討は充分に行われた後、模擬実験(シミュレーション)がなされていた。年率2倍、10年で1000倍というハード・ソフトの進歩の中で、力任せに計算する手法が大手を振って闊歩する時代が来た。高速のコンピュータを持っている方がより有用な結論に達し得る、という世界に疑問を持ちつつ、原点に立ち返って論陣を張ってみた。
(TRUE IS SIMPLE.)であり、SIMPLEな理論がソフトに生かされ、それにハードの進歩が加わればもっとよいという考え方に立ち返りたいものである。
 流体現象(風、小川の流れ、雨が降る、、)は、もっと身近な問題ではなかったか、、。

参考文献
近藤純正:身近な気象の科学 熱エネルギーの流れ、1987,東京大学出版会
角谷典彦:連続体力学、1969、共立出版社
藤本武助:流体力学、1970、養賢堂
近藤純正:大気境界層の科学 大気と地球表面の対話、1982、東京堂出版
新田 尚:転記と予測可能性 ひとつの天気予報論、1982、東京堂出版
吉川泰三:物理学実験、1969、学術図書出版

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