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2009年12月 4日 (金)

イタリアへ"ボナセーラ( こんばんわ )"

このあと宏はシンプロン峠を駆け下り、一気にイタリアの"ドモドッソラ"という田舎町に入った。
Photo_8
 そこで困ったことが起こる。言葉が全く通じないのだ。
飛行機や電車の旅では有名な都市に降り立つことになり、大抵の場合英語が通じる。
しかし自転車での国境越え、ましてやスイスの山の中からイタリアの片田舎へと国境を越えたのだ。通じる訳がない。

 悪いことに国境で、イタリア通貨購入を忘れていた。 幸い、日本製のバイクに乗ったドイツの青年グループが通訳してくれて、宿代はスイスフランで払うことに交渉がまとまった。夕食代も「ツケ払い」である。
 何とも味気ない食事となった。

なにくそ!と、宏は思った。遠の昔に、六か国語の会話集は無くなっている。
「地球の歩き方」のわずかな単語のページを破り取って手に持ち、付き合ってくれそうな人を探して回る。
 夕暮れ時で、陽はまだ屋根の上にある。
泊まることになった"宿&レストラン"の前には、いくつかの椅子とテーブルがあり、数人のおじさん・おじいさん達がワインを楽しんでいた。 宏は「座ってもいいか」と身振りで示す。
何も言わないのも変なので、通じないとは思ったがドイツ語で「ここに座ってもいいか?」と言いながら椅子を指差した。
 首を縦に振ってくれる。

ボンジョールノ(こんにちは)」と、イタリア語に添えてあったカタカナを発声してみる。
直ぐに反応があった。首を横に振りながら"天"を指差して、
「違う。もう夕方だ(とでもいっているのだろう)、ボナセーラ」

 うんうんと頷きながら宏は、
ボナセーラ(こんばんわ)」と繰り返し、すぐにカタカナで書きとめる。
ワインを指しながら、「ワイン?」と語尾をあげると、
「ノン。ヴィーノ」
「ビーノ?」
「ノン、ノン。ヴィーノ」
「ビール?」
「(それは泡の立つやつだ)。ヴィーノ」 と、唇を前に突き出して発音してくれる。
「ヴィーノ」
「スイ(そうだ。YES)」
「(泡の立つのは)ビール?」
「ノン。ビーレレレ」 と、 "R"と"L"の発音矯正をしてくれる。

 どこから来たのかの質問は身振りで予想が付く。
国の名前や都市名は、ほぼ万国共通だ。
「ジャパン・ヤーパン・ニホン・ニッポン・・」と喋っていれば通じてくる。
「ベルギー・ベルガム、⇒オランダ・ホランダ、⇒ドイツ・ドイッチェランド、⇒スイス・スイッチェランド・・」
 「アルプス(を越えて)」も通じた。
「シンプロン峠を自転車で」 と、両手を胸元で回転させて見せる。
「(それはイタリアでは)ビチグレッタ」
誕生日は難しいのでパスポートを示すと、「コンプレアーノ」
 肌の黒いところと白いところを交互に指すと、「ネロ、ビヤンコ」

 おじさん達も面白がって、次々と単語を教授してくれる。
こんな調子で夜更けまで、46歳の誕生日を祝ってもらう事が出来た。
レストランも閉店間際になってきたのであろう、ウエイトレスの姉さんやコックさんまで出て来て、宏を囲む人だかりは十数人に膨れ上がっていた。

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