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2011年9月 5日 (月)

浜辺のキツネ-3 ( 刺さった釣り針 )

 すっかりその島が気に入った初老のキツネは、正が日の3日間をその浜辺で過ごした。四国八十八カ所めぐり に改めて旅立つにあたり、何かお礼がしたかった。
やくざでも一宿一飯の恩義 を感じる。ましてや初老の私がしない訳にはいかない』。 改めて周囲を見廻すと、釣り人が捨てて行ったゴミで、海岸 ごみだらけ であった。『 そうだ、これを掃除してあげよう!』
 自分が運転して来た車から草刈り機を取り出し、付近の草を刈り始めた。
ものの5分もしない内に、草刈り機が回転しなくなる?
見れば釣り糸が幾重にも絡まっていた。数分毎に回転が止まり、巻き付いた釣り糸を取り除く。次第に乱暴な取り除き作業になっていく。
 『 痛い!』 鋭い衝撃が手に走った。
見ると小指の付け根に太い釣り針 が食い込んでいた。
『 取れない。困ったぞ。』
 向こうの砂浜に釣り人が数人たむろしていた。走り寄って「抜いてくれ」と頼んだ。
あずってもあずっても釣り針が取れない。終いには「病院に行った方がいい」と言いだす。
「 冗談じゃない。今日は1月4日だぞ。病院なんか開いてない。たったこれっポッチのことで病院なんて勘弁してくれよ。何とか取り除いてくれよ」
 そうこうする内に、軽トラック が通りかかった。 『 しめた。地元の方だ。』
車の中から年配の たぬき親父ヌーっと 現れた。
「釣り針がここに刺さってしまった。何とかなりませんか?」
「・・、ペンチは持っているか?」
「 あります。」と、車の中からペンチを取り出して差し出す。
「 眼をつむってろ!」
 一瞬だった。見事に刺さっていた大きな釣り針は取れていた。
は直ぐに止まる。海での怪我は膿んだりしない。」
「ありがとうございました。」
「何してたんだ?」
「草刈り機に絡まったゴミを取り除いていて、グサリっと刺さったのです」
「ああ、お前か。あそこの海岸に草刈り機を投げてあったので、不審に思っていたのだ」。
「(3日間、お世話になったので)一宿一飯のお礼にと、海岸の掃除をしてました」。
 気を良くしたタヌキ親父は言った。
「何処から来たか?何処に行こうとしているのか?」
「四国八十八カ所巡りに向かう途中です。ここ数日、この浜辺でお世話になりました」
「(急ぐ旅ではなさそうだな)あの部屋を貸してやる。ゆっくりして行け。家賃はいらない。俺の海の家 付近を暇な時に掃除してくれればそれでいい。トイレはあそこだ。水はこの蛇口から使え。電気も自由に使っていい!」
 願ったり叶ったりであった。
  大山宏「大人のイソップ」 -- 続く --

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